長編 | ナノ

 2/


確かに、彼らは仲良しグループというわけではなかった。
元々は小さな集まり。
中心人物だった近藤と、その近藤を慕ってる沖田と土方は腐れ縁だった。
昔から三人でくだらないことばかりやっていて、それが当たり前のようになっていた。
しかし時間が経つにつれ世界が変わった。
土方たちの周りに人が集まりだしのだ。
理由は簡単。
中途半端な連中が、近藤の人柄に惚れ込んで集まってきたのだ。
それは土方も沖田も同じだったのだろう。
何の繋がりもない連中が、近藤という一つの存在で繋がるようになっていた。
繋がっていたのだ。
たった数分前までは。
土方たちの繋がりは馴れ合いとは程遠いものだった。
それでも、こうも見事に裏切られるとは誰も思ってはいなかった。土方でさえ。
だからこそ、その裏切りに怒りよりも先に驚いた。
しかし事態は想像以上に深刻だった。
狙いは近藤。
土方や沖田が近藤から離れている今まさに、近藤は狙われていた。
人数を集めるより、確実に使える人間が必要だ。
土方らが近藤の元へ向かってる間、同じように近藤に向かう相手の仲間を足止めできる人間。
それも確実に、だ。

「河上万斉を足止めしてくれ」

土方は山崎から告げられた名前を坂田に告げた。

河上万斉。
その名前を聞き、坂田は感情の読み取れない視線を土方にむける。
二人の視線が合わさった。
「…かわかみ…かわかみ…」

と、不意に視線を空に向け、記憶を辿るように繰り返す。

「…かわかみかわかみ…」
「デカくてサングラスの奴がいんだろ」
「……ああ。あいつか。あの変な喋り方の。なんとかナリ〜とか「それはコロ助だ」」

ピクリとも表情をうごかさずに即答する土方。

「奴の喋り方はコロ助よりハットリくんに近い」
「……土方くん、マジツッコミは傷つくからね」

白い煙を吐きながら冷めた口調の坂田を土方は睨む。

「てめえにいちいちツッコんでる暇はねーんだよ」
「俺ならいつでもツッコミてえけどな」
「じゃあ河上にツッコンでくれ。万事解決だ」
「いやいや俺だって選ぶ権利あるからね。ツッコンで下さいって言われてツッコンでたら俺の息子がいくら頑丈でも保たないからね。それより何より俺ってすっげー女好きだから。男相手にたたないから」
「――何の話しだ」

土方のこめかみに青筋が浮かび上がる。
ようやく話が噛み合ってないことに気付いたらしい。
今にも爆発寸前の土方。
それとは正反対に、どこまでもローテンションな坂田は「ジョーダンジョーダン」と、再び口元に煙草をあてた。


「冗談だよと嘘を吐く」2
08.05.04

[ prev / next ]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -