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▼ 長編未来設定で土方+坂田と土方×妙

(土妙←坂田)









「そこで見張ってんの?暇だねー」

その笑いを含んだ声に、土方は眉間に皺を寄せる。面倒なヤツと会ってしまった。この学校は面倒なヤツばかりだが。

「ムッツリで束縛激しいって救えねえよな。カノジョ眺めてるだけで興奮するタイプ?校内でちんこ勃たせてたらヘンタイだぜ、土方くん?」
「俺に話しかけるな。バカがうつる」
「バカの総大将とつるんでんのに今さらじゃね」

坂田が暇つぶしにからかっているのが分かるから余計に面倒だ。

「そーいやその大将がお前を探してたぜ」
「近藤さんか」
「お妙さんの写真を返してくれとかなんとか」
「ああ・・・」

近藤が隠し撮りしていた妙の写真を没収したのはつい先日のことだ。

「写真くらいいーんじゃね。オカズにすんのがせいぜいで、お前から志村を寝取っちまおうなんざ考えてねえのによ」
「隠し撮りされたのだけだ。ちゃんとしたのは残してある」

ふーんと興味なさげに坂田が首を鳴らした。

「はえーな」

坂田の視線の先には、50m走のタイムを計っている女子の集団。今日の体育は体力テストのようだ。今走り終えたばかりの少女が友人達と笑っている。

「お前のカノジョ、ぶっちぎりじゃん」

ポニーテールを揺らして笑う妙はこちらに気付いていない。その姿を遠巻きに見ているのは彼らだけではなかった。教室の窓から、同じく体力テストをしている男子生徒から、彼女は知らずのうちに視線を集めている。

「束縛してえの、なんか分かるかも」

あんだけ目立つならねえ、と坂田は軽く言い放つ。

「俺がいつ束縛したんだ」

土方は、まるで確定事項のように語る坂田に反論する。束縛したつもりなど更々ない。今も、たまたまサボっていた場所から妙の姿が見えただけだ。

「志村が言ってたけど?」

驚いた顔で自分を見る土方に、坂田は口の端を少し持ち上げた。意地の悪い顔。

「俺は聞いた話を言っただけだから」
「聞いたって、何をだ」
「さあ?お前が俺と志村の仲に不満をもつくらいには嫉妬深いってこととか?」
「・・・そんな話、あいつにするかよ」
「だよねー。かっこつけの土方くんが、そんな女々しい台詞言わねえわな」

やけに楽しそうな態度に、やっぱり面倒な男だと舌打ちが漏れた。





放課後に一人、教室から外を眺める。部活動の生徒が大きな声を上げ、身体を動かしている。自分も身体を動かせばいいのかと、土方は思った。最近誰かと揉めることもなく、喧嘩もしていない。だから余計なことばかり考えてしまうのだろうか。

「ごめんね、遅くなっちゃった」

一人きりだった空間に新たな気配が生まれる。ここ以外の空気の匂い。委員会を終えた妙が、土方が待つ教室までやってきたのだ。

「待っててくれてありがとう」
「いや」

素っ気ない土方の言葉に、妙はふわりと微笑んだ。

「今日、外にいたでしょ」
「今日?」
「うん。三時間目。私達が体育の時」

ああ、と土方は曖昧に頷いた。気付かれているとは思っていなかった。別に隠れていたわけじゃない。だから見つかっていたとしても構わないのだが、坂田に言われたことを思い出し勝手に気まずくなってしまう。
束縛してると、妙に思われているのだろうか。

「みんながね、噂してた。土方くんってカッコイイよねーって」

妙の手が、土方の腕に触れた。

「だからね、自慢しちゃった。私の彼氏なんだよって」

思わず自分に触れている細い手を掴んでいた。

「それでいい」
「え?」
「また何か言ってたら、俺は志村のだって言ってくれ」

妙を自分だけのものにしたい。それはずっと変わらない。だから妙も同じように思ってほしかった。その間だけ、みんなの志村妙は土方だけの志村妙になるから。

「私って結構ヤキモチやきだね」

照れたように妙が目を伏せる。

「お互い様だ」

坂田に聞かれたら、またからかわれるのかもしれない。
そうなったら開き直ってやろうと土方は笑った。


しろくろ

2015/01/23


長編設定なので坂田は学生です。で、安定の坂田片思いです。片思いしてない坂田なんて坂田じゃないから。
感情って難しいもので、いつも同じとは限らないですよね。良いときも悪いときもあって。好きな人を褒められると嬉しいのに、同じくらい嫉妬してしまう。ぐらぐら揺れて、白にも黒にもなってしまう。
土方くんの黒の気持ちは「妙を独占したい」というものもあるし、他もグチャグチャしたのがあるのですよ。それと同じくらい白の気持ちもあって。だから揺れてしまうわけでね。土方くんムッツリだから(笑)
でもそれは坂田くんも妙ちゃんも同じ。みんな日々、ぐらぐら揺れる気持ちとどうにか折り合いをつけて頑張ってるんだと思います。まあ、坂田くんはそんな顔を一切見せませんけどね!

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