▼ 仲良し神楽と妙の続き
(去年のアンケ小話で書いた神楽+妙の続き)
その大きな水溜まりはキラキラ綺麗で、ばしゃりと踏み入れようとした足を思わず上げてしまった。綺麗なもの。神楽が好きなもの。
あのひとの手は、これよりもずっときれい。
「可愛いお嬢ちゃんは、水溜まりが気になるのかしら?」
今まさに想像していたものが神楽の肩に乗せられている。指先につれて細くなる長い指がきれい。
「アネゴ」
「神楽ちゃんは目立つからすぐに分かるわね」
「私もすぐにわかったネ」
肩にある手をそっと撫で、妙の手をとった。ぎゅっと握れば、柔く握り返してくれる。
「アネゴなら、目を閉じててもわかるアル」
「あら、嬉しいわ」
妙がゆらゆらと笑う。こんなに温かいのに、消えてしまいそうで怖くなる。まるで水溜まりのよう。
「アネゴ、どこにも行っちゃいやアル」
今は1人ではない。自分の周りには誰かがいる。いてくれる。いたいと思う。大切に思われている。思っている。
だけど、このひとは特別なのだ。柔らかな優しい手はもう離せない。
「でも、アネゴがそうしたいならそれでいいアル」
「神楽ちゃん・・・」
「だから、新八に言われたことは気にしなくていいネ」
妙の大きな目が瞬き、ふっと影がさした。微笑んでいる口元が寂しそうで、神楽は繋いだ手に力をこめる。
「銀ちゃんが言ってたことも気にしなくていい。アネゴの思うとおりにすればいいネ。私はずっとアネゴの味方アル」
誰も、このひとを悲しませないでほしい。それが誰だってイヤだ。彼らなりに妙を思っての発言だと分かっていたとしても。
みんなが妙に思うことは同じなのだ。悲しい顔は似合わない。いつだって笑った顔がいい。見ていたい。
「───ありがとう、神楽ちゃん」
そっと頬をすべった手。仰ぎ見た笑顔が、どんなものよりも綺麗だった。
わたしの好きな手
2014/12/07
暖かで若い色合いが並んだ神楽+妙のイメージカラー。若い葉の色と、繋いだ手の肌の色が思い浮かびました。
新八&銀さんに何かを反対された姉上の唯一の味方が神楽ならいいな妄想。一応、アンケ小話の続きのつもりです。つもり。
この二人を考えるといつも切なくなります。なんでこんな気持ちになるのか分からないんですが、二人が仲良くしてる姿、特に神楽がアネゴを慕う姿を見ると切なくなる。
若くて、若すぎてすぐに傷がついてしまう。そんな二人だなと。
prev / next