▼ 学パロで仲良し高妙
(学パロ高妙)
連絡がとれる携帯端末があったって、それを使わなければ意味がない。高杉のそれはほぼ置物のようになっていた。行動を中断させられる煩わしさが嫌で、反応することもほとんどない。かろうじて電源をきらず持ち歩いているのは、それなりに便利な面もあるから。自分が使いたい時にないと困るからだ。
そう言った高杉に「ワガママだね」と笑ったのは誰だったか───
『次は自習だよ。どこに居るの?』
唯一高杉が反応を見せるアドレスからメールを受信した。高杉をワガママだと笑った相手からだ。部室が並ぶ運動場の端、その裏にある木の影で昼寝をしていた高杉は緩慢な動作でそのメールに返信をする。普段なら見るだけなのに、なぜ返事をしようと思ったのか。自分でもよく分からない。多分、くだらない理由だから考えたくもなかった。
「・・・やっぱりここだ」
高杉を見つけた妙は嬉しそうに笑う。
「さてと、話を聞きましょうか」
「何の話だ」
「メールくれたじゃない。寝てるって。いつもは返信なんかしてくれないのに」
ひどいよねえ、と笑いながら高杉の隣に腰を下ろす。
「だから、来てほしかったのかなって」
ふわりと風に乗って、いい匂いがする。煙草や香水じゃない。柔らかな香り。高杉の周りにはない匂い。
「今何時」
「授業中だよ」
「なにしに来た」
「えーと、高杉くんに会いに?」
「くだらねえ理由だな」
「くだらないかな。彼氏に会いたい理由ってそんなものじゃない」
彼氏、という単語に腹の奥がむず痒くなった。付き合い始めたのは最近で、その経緯も不確かでくだらないもの。
「俺はお前の彼氏なのか」
「彼氏じゃないの?」
「さあな」
恋人のような事はしていない。二人で出掛けたことも、触れたことすらない。
「私を好きじゃない?」
瞼の上に影が差す。妙が自分を覗き込んでいる。顔を近付けて、警戒もせず、こんなにもすぐそばまで。
「バカな女」
高杉は妙の頭の後ろに腕を回した。グッと自分の方へ寄せると、妙の顔が高杉の胸に埋まる。
「くだらねえこと言うくらいなら黙ってろ」
「高杉くん」
「喋るな、犯すぞ」
ただの脅し文句のつもりだった。無理やりヤるなら既にヤっている。黙らせるために言っただけ。
「興味ねえ女に連絡なんざしねえよ」
珍しく返信した理由なんて妙には言わない。ああ書けば妙が来てくれると思ったからだなんて、顔が見たかったなんて、くだらなすぎて言えない。
海の底
2014/12/07
→実は甘えん坊な高杉くんとかいいね!大事にしすぎて手が出せないとかね!万斉辺りに「まだ何もしてないってマジかよ」とか言われてほしい。
高妙は深く暗い色合いばかりでした。大人っぽいイメージの中で、「甘える高杉」というコメントがとても印象に残り、1つくらいは書いてみたいなと。甘える杉さま。
青春なので青なのですが、爽やかな青ではなく、深く重い青の深海が浮かびました。沖妙が弾む青春なのに対して、高妙は沈む青春という感じかな。
とにかく書いてて楽しかったです!
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