▽ 少し未来の志村姉弟で弟が執着気味
※日記で書いてた冷静執着弟設定です
「姉上は嘘つきですね」
新八が不機嫌さを隠すことなく妙を見つめた。
「あら、遅くなるって言っておいたわ」
「こんなに?もう真夜中ですよ」
「そうね、ごめんね。怒ってる?」
「ほら、そうやって笑って誤魔化す」
妙の手をとって部屋へと招き入れる。暖かな居間は新八がずっと起きて待っていた証だろう。
「姉上は、笑っていれば僕が許すと思ってるんだ」
妙が持っていた手提げをこたつの上に置く。帯の辺りで結ばれた上着の紐を解きながら、新八は少し拗ねたような口調になった。姉の前では今でも子供っぽくなってしまう。
「そんなことないわ。新ちゃんに怒られるのが一番怖いもの」
「・・・やっぱり姉上は嘘つきだ」
外気にさらされ冷たくなった上着を脱がせていく。妙は抵抗せず、柔らかな笑みのまま新八に従っていた。
「新ちゃん、まだ怒ってる?」
新八はちらりと妙に視線を送るとそれには答えず脱がせた上着をハンガーに掛ける。そしてこちらに向きなおり、そっと妙の頬に触れた。
「冷たいですね」
「外を歩いたから」
指先で撫でると、妙が目を細める。
「連絡くれたら迎えにいったのに」
「もう寝てると思ったの」
「僕が姉上をおいて寝るわけないでしょ?知ってるくせに」
両手で頬を包み、妙の額に自分の額を擦り付けた。睫毛が触れ合うほどの距離。
「怒ってなんかいません。不安なんです」
「どうして?」
妙が新八の髪を撫でる。可愛い弟が不安だというのだ。少しでも解消してあげたい。
「姉上が僕から離れてしまうかもって」
祈るように擦り寄せた肌が熱い。
「そんなことしないわ。ずっと一緒よ」
「嘘だ。そんなこと出来ない」
「そうね。一日中一緒に居るのは無理だけど」
「分かってますよ。そう出来たらいいけど、そんなことしてたら暮らしていけない」
生きていかなければならない。生きるためには必要なものがたくさんあって、それを得るために外に出て行かなければならない。新八だって分かってはいるのだ。なのにどうしても気持ちが追いつかなくなる。
「姉上、約束して下さい」
この言葉が枷になればいいのにと願いながら、新八は妙の額に唇を押し付ける。
「夜だけは僕といて」
すっかり追い越してしまった背の高さ。小さな姉が愛おしい。姉が大切だ。これ以上なんてあるのだろうか。他にも大切なものはたくさんあるけれど、一つ選べと言われたら姉だけでいい。だから恋人も妻も必要ない。姉以上に好きなものなんてこの世にないのだから。
新八+妙
少し大人になった二人です。姉上は夜の仕事は辞めて昼間働いてます。だけど時々手伝い要請があってヘルプで出るって感じ。新八はそれが嫌。
一歩間違えばヤンデレ方向に進みそうな新ちゃんですが、姉上が上手に受け入れてあげてるので大丈夫だと思います(笑)
これで姉上に恋人ができたら冗談じゃ済まされないくらいの泥沼になるなーと思ったけど、姉上も新ちゃんに執着してるので大丈夫です。
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