ワオ!2013妙誕記念アンケート! | ナノ


▽ 沖田くんと志村さんで両片思い(付き合う前)


この学校には皆が憧れる男の子がいる。女の子はみんな彼が気になるし、彼と親しくなりたがった。

「志村さん」

一年生の時に同じクラスだったという間柄。そんな彼に話しかけられて、妙は少しばかり驚いてしまった。

「志村さん、俺の話聞いてやすか?」
「え、あ、うん」

髪の同じ淡い色の瞳がこちらを見ていた。どことなく涼やかで、アイスティーに似てるなどと突拍子のないことまで浮かんだ。それだけ意外だったのだ。
気付けば、振り返った姿勢のまま妙は固まっていた。さすがに恥ずかしくて、慌てて沖田に向き合う。

「私に何か用事?」
「志村さんのクラスの分のプリント預かってるから」
「え、うそ。委員会終わったの?」
「いや中止。顧問が担任だから先に連絡きて、それで」

これ、とプリントの束を差し出された。

「ごめんね沖田くん。クラス遠いのに。ありがとう」

受け取って、それで終わるはずだった。なのにプリントはビクともしない。沖田が掴んで離さないのだ。

「あの、」
「志村さん」

指先に沖田の指が触れた気がした。

「俺の名前、知ってやすか?名字じゃなくて」
「・・・おきた・・・そうご・・くん」

指先の温もりは離れ、プリントが手の中におさまる。

「良かった、」

普段とは違う音色を奏でる心臓を隠すように、妙は渡されたプリントを胸の前でぎゅうっと抱き締めた。



近付きたいのに近付けない相手が居る。同級生で、去年まで同じクラスだった。誰からも慕われ、いつも笑顔を振りまいているような、沖田が一番苦手なタイプの女の子。

「志村さん」

久しぶりに名前を呼んだ。同じクラスだったときは普通だった行為も、今では特別なことに思える。こんなに遠かっただろうか。

「志村さんのクラスの分のプリント預かってるから」

彼女を見ていると、様々な感情が浮かんでは消える。

「ごめんね沖田くん。クラス遠いのに。ありがとう」

こんなつまらない用事のために、わざわざここまで来た目的を彼女は分かっているのだろうか。
差し出したプリントを彼女が柔らかく掴む。

「志村さん」

指先を少し伸ばして、彼女に触れてみた。

「俺の名前、知ってやすか?名字じゃなくて」

知らないと思っていたわけではない。知っていると確信しているからこそ聞いたのだ。大きな瞳が沖田を映し、唇がゆっくりと動き始める。

「・・・おきた・・・そうご・・くん」

初めて呼ばれた自分の名前。指先が熱かった。何かしでかしそうで意識的に手を離した。思った通りだ。間違いじゃなかった。何かに安堵したように沖田がふわっと笑った。

「良かった────やっぱり俺は志村さんが好きみてえだ」


沖田くん→←志村さん
付き合う前の二人。一年生は同じクラス。二年生でクラスが離れるが、付き合い始めるのも二年生。三年生は沖田くん我慢の一年(笑)

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