▽ アネゴが大好きな神楽
「アネゴの手はきれいアル」
「本当に?嬉しいわ」
妙に膝枕をしてもらいながら、妙の手をじっくりと見つめる。
神楽の手よりも大きいのに、どことなく儚くて。てのひらが柔らかい。温かい。指が細くて長くて。神楽には妙の手が硝子細工のように思えた。
「きれいアル。ずっと見てたいネ」
「ふふ、見てていいわよ」
両手で掴んで、観察するように眺める。血が通う皮膚の下がほんのり赤い。
「今度バカ兄貴が来ても無視するアル。ゴリラストーカーも。あんな奴らがアネゴに触れたら、アネゴを壊してしまうネ」
「あらあら。神楽ちゃんは心配症ね」
「心配じゃない。本当のことネ。アネゴお願いアル、無視するって言って」
この感情はただの独占欲だ。足りないから欲しい。
母の愛が懐かしくて、父の愛が恋しくて、兄の愛を探している。
だが今は違う。愛ならたくさんもらえている。頼れる兄貴分も、仲間も出来た。友だちもいる。大切にして、大切にされている。
でも、神楽の中には少しだけ隙間があった。
そこがどうして埋まらない。何をしても、誰であっても。
その隙間に、妙の手がピッタリだと思った。
「アネゴの手はきれいで、大好きアル」
「ありがとう。神楽ちゃんも綺麗よ」
ふわりと柔らかな毛布のように、妙の手が神楽を撫でていた。
神楽(→)妙
恋じゃないけど、それを越えるくらいアネゴが大好きな神楽とか美味しい。恋でも美味しい。
prev /
next