選択肢はありません
「あの…今度は私が質問しても良いですか?」
「……答えられる範囲なら。」
「それで大丈夫です。」

聞きたいことはたくさんあった。貴方達は何者で、何故、私の首に刃物を押し当てたのか。私が彼を攻撃してしまう前からも、どうして過剰なまでに私を警戒しているのか、どうしてポケモンを知らないのか、たくさんあった。だけど1番、聞きたかったこと

「…此処は、何処ですか…?」

とても嫌な予感がしていた。さっきからずっと気になっていたことだけど、こんなにポケモンの気配が感じられない森は初めて。確かにポケモンを知らない彼らがいる場所に、ポケモンが生息しているとは思わないけど。だけど、私たちの生きる世界に、ポケモンがいない森などあるのだろうか。そもそも私はまだフキヨセシティが見えるくらいに近い草村にいたのに、こんなに深い森には足を踏み入れてはいないのに

「此処は学園の裏々山だ。」
「…う、裏々山。学園…ということはスクールがあるんですか?」
「…スクール?」
「えっと、学び舎のことです…。じゃあ、もしかして私、その学園の敷地内に不法侵入してしまっているということですか…?」
「そうだ。」

私はいつの間に山の中に入り込んでしまったのだろう。爆発に巻き込まれたとしてもそんなに飛ばされる筈がないのに…。あーもう考えても全然分からない!とりあえず不法侵入、犯罪はダメ絶対だ。要するに完全に悪いのは私の方だったのだ。これで警戒されていた理由が分かったし、きっと彼らはその学園の人なのだろう

「本当にすみません。攻撃してしまった彼の治療費はしっかりと払わさせていただきます。」
「…………。」
「あ、えっと…とりあえずすぐに此処から出ていきますので。後日、またお伺いさせていただきます、本当にすみませんでした。」

今はポケモンの気配が感じられないとか一旦置いておこう。それはまた後で確認すれば良いことだ。そしてとりあえず通報される前に此処から出よう、とピカチュウを抱きかかえて踵を返すが、いつの間に近づいていたのか黒髪の彼に進行方向を塞がれてしまっていた

「お前には学園に来てもらう。」
「…え、な、何故ですか…?」

目の前に立ちふさがる彼はまた刃物を此方に向けて警戒している。すぐに出ていくと何度言っても、彼は首を縦に振ろうとしない。それどころか

「お前にはまだ聞きたいことがあるからだ。」

そう言って、いつでも殺せるんだぞ。そんな殺気を放っている様に感じた


選択肢はありません
(私は彼について行く他、ないのでしょうか)


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bkm