一応、こちらに向けられていた刃物は下に下してくれたようで、私はほっと息を吐いた。本当に喉を掻き切られたら堪ったもんじゃない。それにしても本題だ。ピカチュウ本当にゴメンね!今すぐに助けるから待っててね!
「…えっと、さっきの質問のピカチュウのことなんですが…ピカチュウとはポケモンの一種でして、私の仲間です。それで…今、その落とし穴の中で目を回しているんです…。」
「助けたいので、その…良いですか?」
そう言いながら彼の顔を伺い…というか目しか見えないんだけど…ゆっくりと尋ねれば彼がまた刃物をこちらに向けて構えるものだから、私は大げさにびくりと肩を揺らしてしまった
「下手な真似をすれば…わかっているな。」
分かってる!もう倒れそうなくらいに分かってるから!コクコクと頭を上下に振って応えれば、彼はジリっと足を一歩後ろへ下げる。これは助けても良いってことだよね
「その…ピカチュウを助けるのにポケモンの手を借りたいのですが…良いですか?」
「……あぁ。」
先程、鷲色の髪の彼を吹き飛ばしてしまった手前、ルカリオを出すのは少しだけ気が引ける。ここは彼の手を借りよう
「ツタージャさん!いっちょお願いします!」
腰につけたモンスターボールの内の1つを、ピカチュウがいる穴の近くに投げれば一瞬の閃光と共に愛くるしい顔をしたツタージャが飛び出してきた
「タージャッ!」
「ツタージャさん、穴の中のピカチュウを助けてくれるかな。」
「タジャタージャッ!」
何て頼もしい。よし任せろとばかりに胸を叩くツタージャさんは、一瞬でつるのむちを使ってピカチュウを穴の外へと救出してくれた。ピカチュウは未だに目を回していて、何とも申し訳ない気持ちになる
「ツタージャさんありがとう。今日のおやつは奮発するからね!」
「タジャーッ!」
やったねとばかりに周りに花を飛ばすツタージャさんが愛くるしいです。もう一度ありがとうと言って、ツタージャさんはモンスターボールの中へと戻っていった。それを腰に戻せば、黒髪の彼はさっきと同じように驚いていた。そんな彼に私は漠然と、本当にポケモンを知らないんだ…と改めて感じた
「…今のもポケモン…か?」
「はい。今の緑色のポケモンがツタージャで、こっちの黄色いポケモンがピカチュウです。」
私の腕の中にはぐるぐると目を回したピカチュウがいる。私は地面に打ち付けて瘤になってたその小さな頭をよしよしと撫でた
いっちょお願いします
(長々と穴の中へ落としたままでゴメンね)