魅惑の黄色ボディ
あれから私は半ば、脅される様な形で彼らの学園へと案内…いや、連行された。鷲色髪の彼も道中に無事、目を覚ましてくれた様で、私は半ば土下座する勢いで謝罪をした。笑いながらも大丈夫だからと言ってくれた彼には、本当に頭が上がりません

「して、いい加減に頭をあげなさい。」
「は、はい…。」

場所は変わって学園長先生の庵という、この場所で1番偉い方の部屋に私はいる訳なんですけども…。前にはその学園長先生と、威圧的な雰囲気を飛ばす教師の方たち。後ろには私の脱走経路を塞いでるかの様に、襖の前に正座をしている先程の男の子2人。私は森で話したことをそのまま学園長先生たちに説明した後、どうにも周りの視線が怖くてじりじりと畳に額を押し付けていた。とりあえず1番偉い人が頭を上げろと言ってるのだからと、私は恐る恐ると顔を上にあげたけど、相変わらず周りの視線が鋭くて震えあがりそうだ。助けてルカリオさん

「そのポケモンとやらを見せてもらっても良いかの?」
「も、勿論です。」

私はちらりと教師の方たちの視線を気にしながらも、ゆっくりと腰のベルトに付いているモンスターボールに手を伸ばす。途端にびくりと教師陣の警戒が強まった様な気がしたけど、私は内心ひーひー言いながらも1番手前に付いていたボールを1つ目の前に持ってきた

「これが、モンスターボールで…この中にポケモンがいます。」

私がカチりとボールのボタンを押せば、シュっという空気の抜ける様な音と共に掌にすっぽり収まる大きさだったモンスターボールは掌でも包み切れないくらいの大きさへと変化した。やはりそれに驚いたのか、途端に周りがざわっとどよめいた

「…えっと、じゃ、じゃあ出しますね。」

良いよね大丈夫だよね。私は周りの顔をちらちらと伺いながら学園長先生に問えば、彼は一言うむ。と頷いた

「おいで、ピカチュウ。」

カチっと開閉ボタンを押して足元にボールを放れば、パカンという小気味良い音と共に小さな閃光が走り、中からは黄色いふっくらボディが可愛らしい私の相棒、ピカチュウが飛び出してきた。よし、今日も絶好調の可愛さです

「ピッカチュウー!」

チャア!と笑顔で学園長先生に挨拶をするピカチュウさん。周りの視線なんて全く気にしていないのか、楽しそうににこにこと笑っている。はて?うちのピカチュウの性格は「ずぶとい」だったっけ

「…こ、これがポケモン…、」

またしてもざわざわと騒ぎだす教師陣に、何だか居心地の悪さを感じるけど、ピカチュウはやっぱり気にしていないのか、教師の方たちにもチャア!と挨拶をして周っている。とても社交的だなおい

「…学園長先生、これは…。」

妙に童顔な教師の方が戸惑い気味に学園長先生に声をかけているけど、学園長先生はそれに気づいていないのか何やら俯いたままぶつぶつと言葉を発している。何かを喋っているんだろうけど如何せん、声が小さいので聞き取れない。ピカチュウもそんな彼を心配しているのか、下から学園長先生の顔を見上げる様にして「ピカ、ピーカ?」と声をかけながら彼の膝を小さなその手でぺしぺしと叩いていた

「いかがされましたか?」

そんな学園長先生をやはり不審に思ったのか、後ろにいた教師の方たちも学園長先生に声をかけるが、相も変わらず学園長先生は俯いたまま口をパクパクと動かしたまま。一体全体、どうしたんだろう

「…か、………か…か、」
「…学園長?どうしましたか…?」

遂に何事があったのかと人一倍、顔がテカテカと輝いている先生がそっと学園長先生の肩に手を置く。それを真似するかの様に、ピカチュウも膝に手を置いたまま小首を傾げながら学園長先生の顔を更に覗き込む様にして乗り出した

「か、…か、か…。」
「か?」
「ピピカチュ?」
「…か、かかか」

「可愛いいいいいいい!」
『えぇぇぇぇ!?』

目をキラキラと輝かせた学園長先生は、ガシっとピカチュウの脇腹に両手をさしこんだかと思えば、その頬袋に自分の桃色に染まった頬を凄い早さですりすりと摺り寄せていた。所謂、高速頬ずりだ。私はそんな光景に、あ、何かこういうの見たことある。ポケモン大好きクラブの人たちにこんな人いたぞ。と場違いなことを思っていたけど、教師陣はそうでは無いらしく。そんな学園長先生の反応に、彼らがコントの様に後ろにひっくり返ったのは何だか意外だった


魅惑の黄色ボディ
(そして、そんな学園長先生にビックリしたピカチュウが、彼に電気ショックを与えたのは言うまでもないだろう)
「ひィィィ!ピカチュウやめてぇぇぇ!」


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