今にも殺されそうだけど
「…あの、つかぬ事をお伺いしますが…どちら様ですか?」
「それをお前に説明する云われは無い。」

ザっと木の上から飛び降り、刃物を構えこちらを警戒する黒髪の男性。もちろんこの人も先ほど倒したプラズマ団の残党なのだと思った。だけど、いつもプラズマ団が着ているとてつもなくダサいあの衣装。彼はそんな衣装を一切身に着けておらず全身、黒で統一された服を身にまとっていた。表情は口元までもその黒の布で覆っているせいか、その今にも射殺さんばかりのギラついた視線しか伺えなかった。何これ怖い。

「…あの…せめて1つだけ…貴方たちはプラズマ団…ですよ……ね?」
「………違う。」

それくらいなら良いと思ったのか。彼は何かを考えた後、それだけを応えまた黙ってしまった。何てことだ。じゃあルカリオの『はどうだん』を受けた彼も、プラズマ団じゃないということか。さっきの攻撃で起きた砂埃は、もうすっかりとおさまっていて、ちらりとこちらを警戒している黒髪の男性の後ろを見れば、鷲色の髪の毛をした男性が倒れていた。勿論のこと彼はプラズマ団の衣装は着ていなくて、黒髪の彼と同じ黒の衣装を身にまとっていた。今はもう、すっかりと砂埃のせいで白くなっているけど…………殺されるっ!

「ご、ごめんなさい!私、貴方たちをプラズマ団と間違えて!あの!悪気は無かったんです!いや!あったんだけどそれはプラズマ団へで!貴方たちには全くなくて!あの!その!」
『(主…落ち着いてください…。)』

波動で直接頭の中に響いてくるルカリオの声。分かってる、分かってるんだけど私は何てことをしてしまったんだ!

『(最初に手をかけて来たのはあちらに変わりはありません。なのでこちらは正当防衛です。)』
「…そ、それもそうか…。」

プラズマ団なら私を捕まえようとする理由は分かる。だけど彼らは何故、私を捕らえようとしたのだろうか。私は手に持っていたモンスターボールをルカリオへ向けスイッチを押した

「ありがとうルカリオ…休んでいてね。」
『(主…気を付けて…)』

その瞬間、一層に強くなる彼から私への警戒心。そしてルカリオをモンスターボールへと戻す一瞬、酷く驚いたような…鋭かった目が驚きに見開いていた。何でだろう…?私はルカリオをモンスターボールへと戻し、両の手を上へと上げた。これはもう戦わないという意思表示だ

「あの…約束します。もう絶対に貴方たちに危害は加えないと。ですので教えてください。何故、私を捕らえようとしたのか…それと出来たら、此処が何処かということも…。」

「気づいたらこの場所にいたんです…。」そう言えば…目の前の彼は刃物を下して、脈確認のためか倒れていた鷲色の髪の毛の彼の首元へと指をあてた。まだ生きていることが分かったからだろうか…少しだけ彼の気が緩んだような気がしたけど、未だに射殺さんばかりの視線は此方へ向いていた

「まずは私の質問に答えろ。此方が答えるのはそれからだ。」

少しばかり理不尽な要求だったが、こちらも鷲色の髪の彼を傷つけてしまった身。大人しく従うことにし、コクリと頷いた


今にも殺されそうだけど
(しかし何というか…鷲色の彼には申し訳なさすぎる…)


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bkm