一波乱呼んでまた一波乱
今日も今日とて華麗にプラズマ団をやっつけた旅日和の午後。それは「さぁ、出発だ!」と荷物を抱えた時だった。荷物の横にコロリと転がっていた忘れ物。それがプラズマ団特性の爆弾だということに気付いた時には、既に相棒のピカチュウ諸共、私はその爆発に巻き込まれていたのでした。そんな春の日差しが気持ち良かった午後のこと

「…ねえ、ピカチュウ…私たちまだそんなに街から離れたとこには来てないはずだよね?」
「ピーカァ…?」

確かに爆発に巻き込まれたはずなのに、怪我という怪我もなく目を開けば、そこは見たこともない深い森。ピカチュウも訳が分からないと言いた気に、首をコテンと倒している。あら可愛い

「ピカチュウ、とりあえず歩くよ。」
「ピーカッ!?チ゛ュウゥゥゥゥゥ!!??」
「ええぇ!?!?ピカチュゥゥゥゥ!!!!」

消えた!ピカチュウが消えた!消えた!?いや、落ちた!地面が抜けて忽然と…ってこれ落とし穴!?

「な、何でこんなとこに落とし穴が…ピカチュウ大丈夫?」
「…ピ、ピカァ…」

穴の中を覗いてみれば、それは思ってたよりも深い穴だったようで、ピカチュウは目を回して気絶していた

「待ってねピカチュウ!すぐに助けるからね!」

それなら此処は彼の登場だ。腰に付けられた6つのボール。私のパートナー達。私は、そのうちの1つのルカリオが入ったボールに手を伸ばした

「動くな。」

しかし、ボールに触れる前に伸ばした手は後ろに拘束され、おまけとばかりに首に何か冷たい物を突き付けられた

「…な、何!?」
「お前、何者だ。」

状況を理解するよりも早く後ろから聞こえた低い声。それは今、私を拘束しているであろう人物からであり、男性のものだった。それに何者だ?ってそれはこっちが聞きたい台詞だよ!何で私は行き成り捕まってるんだ?……っ、まさか!

「貴方!プラズマ団の残党ね!」
「……………。」

毎回、私のポケモン達を奪おうとして攻撃をしてくるプラズマ団。さっき全員を追い払ったと思ったけど、その仲間がまだ近くに残っていたのなら今、私が捕まっている理由も納得がいく

「言っておくけど、こんなことしても私のポケモン達は、絶対に貴方達になんて渡さないんだから!」

この子たちは私の大切なパートナーで信頼する仲間達!それをこんな奴らになんて渡してたまるもんか!それにこの子達のためにもバトルで負ける訳にはいかないんだから!

「出ておいでルカリオ!そして『サイコキネシス』!」

呼びかけに応じ眩しい閃光と共にボールから飛び出してきたのは、パートナーの中で1番、付き合いの長いルカリオ。それに波動で今の私の状況は全て把握してるから、適格に対処をしてくれる。ルカリオは飛び出してきた瞬間、瞬きをするよりも早く『サイコキネシス』で私を拘束している人の動きを封じ、腕の力を弱めさせる。私はその一瞬で彼から離れ、振り向き様に次の攻撃を仕掛けた

「ルカリオ!死なない程度に『はどうだん』!」
「ガゥッ!」

流石にルカリオの本気『はどうだん』を食らってしまえば確実にジュンサーさんにお世話になってしまうからね。だから気絶させる程度に軽めに軽めに。そして彼が気絶している間に逃げてしまえば良い。そういう意図を込めた私の指示に頷いたルカリオは、掌に気を集め一気にプラズマ団の残党へ向かって振り放った

ドオォォンッ!

振り向いた時には既に私がいた所には煙が立ち込めており、ルカリオの反応から見ても確実に攻撃は決まった様だ

「ルカリオお疲れ様!」

さ、今の間にピカチュウを助けて逃げるよ。そう言おうとした時だった

「待て。お前を此処で行かせる訳にはいかない。」

今までの一連を見ていたのか、音もなく木から飛び降りて来た人物に私は溜息を吐いた。まだいたのかプラズマ団の残党は。だけど私はコテンと首をかしげる

「…プラズマ…団?」

一波乱呼んでまた一波乱
(何かいつものあのダサめの衣装と違うんだけど…)


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bkm