涙を流したのは誰?
昨晩、空から女が降ってきた。皆が言うには、その女は不可思議な服装をしており大層、美しい容姿をしていたらしい。自分が未来から来たとなどと言う女にも関わらず、有ろう事か学園長先生はその女を学園の事務員にした。そもそも未来から来たなどという話自体、胡散臭いのに何故、誰も怪しまないのだろうか?そうも簡単に受け入れてしまってどうするのだろうか?そう思っているのは僕だけなのか、六年の先輩や後輩たちまでもが、彼女を「天女」と呼び慕っていた。忍たまだと言っても、これが有るべき忍の姿なのだろうか?あぁ、でも今はそんなことどうでも良い。だって今日は空斗がやっと学園に帰ってくる日じゃないか。どうしよう、今からとても待ち遠しいよ。帰ってきたら一緒に食べようと約束したお団子の準備もしなくちゃね

ねぇ、空斗、俺はキミの帰りをずっと待っているからね


空斗を迎えに行く前に、朝から姿を見ていなかった4人の級友を探しに行く事にした。お出迎えは皆で揃って。これも俺たちの中での決まり事。だけど長屋に行っても食堂に行っても、図書室に行っても彼らを見つけられなくて、仕方なく俺は、先に門へ行って待っておくことにした。だけど門が見えてきたところで、空斗の方に走り寄る4人を見つけた。空斗が帰って来てる!俺は嬉しくて、4人に追いつく様にダッと勢いよく走り寄った。そして言おうと思ったんだ「おかえり」って。だけど

「空斗!こっちに天女様が来なかったか?」
「じゃあ今度は食堂に行こう!」
「じゃあな空斗!」

一瞬、意味が分からなった。「ただいま」も言わせてもらえなかった空斗は、酷く傷ついた顔をしている。そして遂に理解した。アイツらも、あの女を慕っているんだと。別に選んだのはアイツらだから、どうしようと俺が何かを言う権利は無い。だけど、空斗に「おかえり」も言わないのはどうしてだ?何の権利が有って、空斗を泣かすんだ?何故、5年も共にした友人をこんなにも苦しませるんだ?言いようのない怒りが、腹の中に溜まっていくのを感じた。空斗を傷付ける奴は絶対に許さない。それが例え、共に歩んできた仲間だとしてもだ


涙を流したのは誰?
可愛そうな空斗、もう泣くのはおやめ
俺がずっと、傍にいるから...

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