大切な人が変わった日
太陽がすっかり真上に上がってしまったお昼時。僕は学園長のお使いで、此処から少し離れた町に出かけることになっていた。町へと続く学園の門には、見送りに来た大切な5人の仲間たち

「空斗、もう忘れ物は無い?」
「道中気をつけろよ?」
「知らない奴にはついて行くなよ。」
「寄り道しないで、早く帰って来いよ。」
「帰ってきたら一緒にお団子食べよう。」

こうして仲間の誰かが学園を離れる時は、皆で集まって見送ることが僕たちの決まり事だった

「なるべく早く帰ってくるよ。」
「待ってるから早く帰って来いよ!」
「うん。じゃあ皆、いってきます!」
『いってらっしゃい!』

少しの間だけと言っても、皆と離れるのは凄く寂しいなぁ…そうして僕が学園の門を潜ったのが、3日前のこと


3日ぶりに帰ってきた学園はすっかりと変わっていた。学園内は浮足立った雰囲気を醸し出していて、何処か甘い気配も感じられる。何より、いつも「おかえり」と迎えてくれる大切な仲間たちがいなかった。何かがおかしい。ぽつんと門の下に立っていれば、漸くぱたぱたと駆け寄ってくる5人の姿

「あ、みんな!ただい
「空斗!こっちに天女様が来なかったか?」
「……え、き、来てないと思うけど…。」
「じゃあ今度は食堂に行こう!」
「じゃあな空斗!」
「え、あ、ちょっと皆、待ってよ!」

ねぇ、何処に行くの!?天女様って誰!?だって皆は僕を迎えに来てくれたんじゃないの!?僕はまだ言ってないよ「ただいま」って、それに「おかえり」だって聞いてないよ。食堂の方に走って行った4人を、どうにも出来ずにただ見送った。皆どうしたの?もう僕たちの中での決まり事忘れたの?どうでも良くなったの?酷く悲しくて辛くて、何よりも心が痛くて、みっともなく声を上げて泣きだしてしまいたかった

「空斗…。」
「…勘ちゃん…。」

僕の肩に優しく手を添えて、今にも泣きだしそうな顔で笑う勘ちゃん。勘ちゃん勘ちゃん勘ちゃん。僕は勘ちゃんに抱きついて、熱を持ち始めた目をその胸に抑えつけた

「おかえり空斗。」
「…た、だいま…勘ちゃん…。」

僕の頭を撫でる勘ちゃんの手が、少しだけ震えていた

「……ごめんね、空斗…。」

どうして勘ちゃんが謝るの?僕は勘ちゃんに言いたいよ「ありがとう」って。僕は勘ちゃんに抱きつく腕に、ギュっと力を込めた。泣かないで勘ちゃん。ありがとう僕を待っていてくれて


大切な人が変わった日
「俺はずっと空斗の傍にいるよ。」
「…うん、…うん、ありがとう、勘ちゃん…。」

だけど変わらないでいてくれた人もいた

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