鎖から解き放たれた獣は
アイツに出会ったのが運の尽きだった。私がどんなに死ぬ気で走って逃げても、アイツは顔色一つ変えずに後を追ってきた


「残念だったね。また子の武器がアタリだったら僕に向かってこれたのにね。」


神威が「ただのバットなんて残念だったね。」と笑ったのが声の調子で分かった。そう言う奴の手にはウージ9ミリサブマシンガン。そんな武器を手にしているのに、神威は撃つことなく私の後を走っていた。それは完全にこの殺し合いを楽しんでいる証拠


「あれ?もう追いかけっこは終わり?…あぁ、そっちはもう崖だもんね。」


迂闊だった。地理も把握せずにただ我武者羅に走っていたから。それ程までに焦っていたのか…崖下には海が広がっていて、岩肌が剥き出しになっていた。この高さから飛び降りたとしても死ぬことはないかもしれない。でも、もしかしたら大怪我をするかもしれないし、最悪死んでしまうかもしれない。でもこの状況で生き残れる可能性があるなら、だったら…だったら私は賭けるしかない!


「お前に殺されるくらいなら、私は此処から飛び降りるっス!」
「へぇ、急に強気になるんだね。」
「強気も何も、最初っから弱気になった覚えはないッスよ!」


だって私はまだ死ねないから。晋助様に会うまではまだ死ねないから…


「お前に殺されるわけにはいかないんっス!」」
「…………………。」


勢いに任せて飛び降りた瞬間だった。一瞬見えたアイツの顔には

酷く歪んだ笑みが浮かんでいた



パラララララッ



「っかはッ!」
「僕って不安要素は残しておきたくないんだ。殺るなら、確実に…ね。」


ぐしゃっと下で生々しい音が聞こえた。頭でも砕け散っちゃったかな。そりゃ良いや、もっと近くで見たかったのに残念


「でもま、まだ始まったばかりだしね。」


次はどんな赤が見れるのかな。どんな苦痛に歪んだ表情が見れるのやら

さぁ、楽しい楽しい狩りの時間だ


鎖から解き放たれた獣は
(なんて素晴らしい世界)
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