大切な仲間だから
後ろを振り返っても土方くんも高杉くんも、追ってくる気配は無かった。きっと大丈夫だって、今の私たちには何の根拠もないことを祈った。だから私は少しでも遠くへ行くためにひたすら走って走って。そこで見つけた。木の根元に寄り添う様にして俯くお妙ちゃんを…座り込む彼女の腹部は血で真っ赤に染まっていて、私は飛び出しそうになる悲鳴を必至に手で押さえて飲み込んだ


「……お妙、ちゃん…。」


呼びかけても応答がない。軽く肩を揺すると、やっとお妙ちゃんは瞳を開き顔を上げた


「……梢、ちゃ…ん…?」
「お妙ちゃん…。」


そこにはいつも強気で笑顔が素敵な彼女はいなかった。頬に伝う涙の跡に、焦点の定まらない瞳


「…何で、お妙ちゃんが…こんなっ…。」


私は悲しくて、悔しくて、どうしようもなくて、お妙ちゃんの涙が移ったようにポロポロと涙を零した


「…泣か、ないっで梢…ちゃん……。」


そんな私を励ますかの様に笑顔を作ろうとするお妙ちゃんの強さに、私はまた涙が視界で滲むのを感じた。そんなお妙ちゃんを困らせてはいけないと思って、私は袖で涙をぐっと拭って、お妙ちゃんの目を逸らさずに真っ直ぐ見詰めた


「…梢、ちゃんに…お願い、がある…っの…。」
「うん、何…?」
「…神楽、ちゃんをっ…助け、て…あげ、て…。」
「神楽ちゃんを?」
「…そう、彼女は…本当、は私たちをっ仲間を…殺したくなん、て…ないのよ……。」


きっと彼女は凄く苦しんでいるから…だから、どうかお願い彼女を


「っ、彼女を…止めて、あげて……お願い、」
「……分かった。約束するよ、お妙ちゃん。」


私はお妙ちゃんの手をギュっと握って、何度も頷いた。それを見て、お妙ちゃんは最後に「ありがとう」と呟くと、それっきり目を閉じて何も言わなくなってしまった


「…お妙ちゃん………」


眠ってしまった彼女。この先もう2度と目を覚ますことはないけれど、彼女の表情は、穏やかな優しい笑みを浮かべていた





――死亡者――

屁怒絽

阿音

公子

キャサリン

来島また子

志村妙


――残り18名


大切な仲間だから
(きっときっと約束してみせるよ)
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