鮮やかな赤色に、白い肌。初めて見たときは、何だかおめでたい配色だなんて、色気のないことを思っていたのに。

隣に並ぶ彼は、いつも通りに見えた。僕はこの狭い空間のなか、いつも通りを繕えているだろうか。近くだから一層よく見える、僕よりはしっかりついた筋肉。運動部男子としては彼だってそんなに出来上がっている訳じゃないのに、勝ち目がない。
僕の複雑な心境を読み取ったのかそうではないのか、赤司くんはくすりと微笑み傘を握り直した。周りは他の音を吸い込むように、雨が降り注いでいる。
天気予報では晴れだったのだ。降水確率は十パーセント。しかし、確かに数分前から雨が降っている。たとえ俄か雨だろうと、十パーセントも、案外侮れない。
体育館の屋根の下で止むのを待っていたときだった。赤司くんが傘をさしながら通りかかって、不思議そうに僕を眺めてから、入るか? と傘を傾けてきた。彼のチェックの折り畳み傘は二人で入るには小さそうだったけれど、折角の誘いを断るのも勿体なくて、お邪魔しますと隣に並んだ。
案の定、僕と赤司くんの身体は入りきらず、僕の右肩と彼の左肩が、それぞれ濡れてしまった。ごめんなさい。大したことじゃないよ。お互いにかける言葉はそれだけだ。
僕が帝光中のバスケ部で背番号を貰ってから数ヶ月が過ぎていた。練習に少しずつ馴れてきてはいたが、僕は未だに他のレギュラーに引け目を感じていた。特に、今隣に立つ赤司くんは、本当に次元が違っている。ストイックに練習に打ち込み、それ以外の雑務をこなし、チームメイトを律して先導する。疲れて身体を壊してもおかしくないのに、まったく休むこともない。ぴんと張った細い縄の上を、まるでそこが危なくないかのように、軽々と渡っていってしまうのだ。恐ろしくも思えてくる。
そして同時に、僕は赤司くんに特別な感情を抱き始めていた。気付いたときにはついにおかしくなってしまったのかと頭を抱えたものだ。つのった憧れが昇華した、恋心の念だった。
尊敬と、畏怖と、恋慕。異なる三つの感情がない交ぜになって、僕を満たす。


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