斎藤 長編 | ナノ


夏休み前の期末考査が終わって
無事全員赤点からは免れた
一くんは学年一位をとったし
総司は古典を除いて学年上位
一番合宿不参加の危機にさらされていた平助も千鶴ちゃんのお陰でぎりぎりの点をとれていたみたい

「もう後は心残りなく合宿ね」
そうやってお昼のパンを食べてる千も学年上位者で
私もそれなりに上位はとれたけれど心が折れそうになる剣道部の頭の良さだ

『うん、トシ兄も張り切ってたよ』
「ふふ、張り切ってるってことは今年も“地獄合宿”になることには間違いなさそうね」
『地獄より地獄の果て合宿だよきっと』
「あんたら・・・何を言ってるんだ」
『ん?あ、やっほー一くん!』
声のした方を見上げれば呆れ顔ひとつ。

「なまえ、今日の風紀委員の日誌はあんたの当番のはずだが」
『あ、ほいこれ』
朝の校門当番の報告を書いた風紀委員の日誌って結構書くの面倒なんだよね
一くんと薫以外の風紀委員は結構適当だし

「・・ちゃんと書けているな」
軽く目を通した後つぶやいたその一言にほっとした
やり直しなんて面倒だしね
「そういえば斎藤くん、合宿の夜のこと聞いた?」
「いや。何も聞いていないが」
『あのね!肝試ししようよ!』
「は?」
あれ、この反応何回目だろう
総司もトシ兄も左之先生も千に千鶴ちゃんまでも一くんと同じ反応だった

唯一平助が目を輝かせてくれた位だ
平助をこれから可愛い後輩として可愛がっていこうと決めたのは昨日の昼のことだった
「何故急に肝試しなんだ?」
『夏だよ?学校にお泊りだよ?もう肝試ししかないでしょ!』
彼にはこの理屈が理解できないらしい
明らかにきょとんとしている
「まぁ、夜は練習もないし土方先生も許してくださったから折角だしやらない?」
千のナイスフォローにより一くんは首を縦に振ってくれた
さすが私の親友だ
まぁ、首を縦に振ってくれなくてもこの肝試しは強制実行と決めている
総司と千を仲直り作戦としてトシ兄から許可貰ってきたしね
そこら辺は当事者と一くん以外は了承済みだ
一くんには悪いが一くん抜きで作戦会議は進めていく予定なのだ
一くん嘘つくの躊躇いそうだし
それにあまり知られない方がバレる可能性も低い

「でも肝試しが決まってから藤堂くん、挙動不審なのよね」
『え?』
「わたしと沖田くん見ると明らかに挙動不審というかなんていうか・・・なまえ、あんたなんか知らない?」

『うーん、平助って馬鹿だしよくわかんないこと気にしてるんじゃないかな、馬鹿だし!』

平助をこれから可愛い後輩として可愛がるというのは前言撤回だ
平助に話すんじゃなかったなぁ
今の私は総司にも負けない自信があるほど笑顔でいると思う
その証拠に一くんが私の笑顔を見たときにびくっと肩を震わせたからだ
一くんって可愛いところあるよね

「なまえ?顔、怖いわよ?」
『千は悪くないんだよ?何にも悪くないからね』

「なまえ、あんたは総司と気が合うわけだな・・」
そう呟いた一くんの一言に反論できなかったのも平助のせいだきっと

『あはは、合宿後生きてるかな?平助』

合宿前。

(なまえ怒らせてるじゃねぇか平助。)
(お、俺死ぬのか?!)
(ご愁傷様、ってやつだな平助。)
(土方さぁん助けてくれよ!!)
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