「ねぇなまえちゃん暇だから君あの永倉先生のはちまき取ってきなよ」
『総司がとってきてよ、私眠い』
「ちょっとこのつまらない授業でぼくを放置する気?」
『新八先生に構ってもらって!!』
煩い、そう感じるのはいつもの事で
永倉先生についてはとうの昔に黙らせるのを諦めたようで「お前ら今日も元気だなぁ」なんて呑気にチョークをすすめる手を止めていた
「あんたたちは少し静かにできないのか」
そう言ったのはその日の昼休みのことで
みょうじは咥えていたパンを咀嚼するのを止め、総司は何を?とでも言いたそうにパックのジュースを飲んでいた
「毎回ああではほかの生徒に迷惑だ」
「だって、なまえちゃん」
『えーっと、なんの話か見えないんだけど・・・・』
「きっと古典の時の話だよ」
「全授業での話だ!」
そう言うと僕たちこんなに静かなのにねー、なんて呑気にいう総司を睨めばいつもの何かを企んだ笑みを浮かべる
「それかそんなに僕となまえちゃんが仲良くしてると嫌な理由でもあるの?」
「何を言っている、あんた達の仲の良さ等知ったことではない」
「へぇ、はじめくんって未だになまえちゃんから斎藤くん呼びしかされないから気に食わないのかと思ってたよ」
そう言われた途端俺は言葉に詰まった
それは最近俺が少しだけ気になりだした事柄であったからかもしれないし
ただ単に総司の目が本気の色を灯したからかもしれない
ただ、本人はといえば「ん?」とでもいいたそうに首をかしげていた
『だって斎藤くんは斎藤くんでしょ?』
「下の名前で呼ぶって選択肢はないんだね」
『ん?はじめくんって呼んでいいの?』
初めて呼ばれたその音に己の鼓動が少し乱れるのを感じながらも俺は小さく頷くとみょうじはいつもと変わらぬ笑みで再度俺の名を呼んだ。
『嫌がられると思ってたのになぁ』
「・・・・なにゆえ」
『え。だってはじめくんいっつも不機嫌そう!』
眉間に皺を寄せてみせたみょうじは俺の真似をしているつもりなようで、
小さくため息をついて見せると、あ!ひどい等と言っては嬉しそうに笑っていた
「まぁはじめくんが不機嫌そうなんていつものことだよなまえちゃん」
『え、そうなの?!』
「そんなことはないあんた達が授業態度を正せば俺とて不機嫌にはならぬ」
「はぁ。真面目なんだから、ね?なまえちゃん」
『なんで私に振るのかな?総司くん?』
「はぁ・・・・そろそろ授業が始まる。準備をしろ、総司・・・・と、なまえ」
その刹那驚いたようにこちらを見るなまえとおもしろそうに目を細めた総司をスルーしては
やられっぱなしは性に合わぬと乱れたままの鼓動の原因に気づくのは後少しの話だ
名前を呼んで。( 何度でも何度でも 。 )
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