「なまえちゃん油性マジックもってないの?」
『あー・・・あったかもまって』
「早くしてよ、土方先生起きちゃうじゃない」
『大丈夫だよ酔ったトシ兄は何しても大概起きないから!』
「・・・・斎藤くん止めなくていいの?」
「俺は何も止めぬ。」
「お?土方さんの顔に落書きか?」
『あ!左之先生もする?』
そんな事をしているのは25日のクリスマスで、下戸の癖に総司に呑まされたトシ兄はいつの間にか酔い潰れていた。
「大体下戸なら下戸って認めればいいのに俺は下戸じゃねぇ!なんて」
『全くいくつになっても意地っ張りだよねぇ、トシ兄。あ、はい油性ペン』
油性ペンを渡すと総司は得意顔でキュッキュッと音を立てながらトシ兄の顔に書いていく。トシ兄は擽ったそうにぴくり、と瞼を動かすけれど起きる気配すらない
「くっ・・・総司、それはないだろ・・・くくっ」
「えーそうかなぁ?じゃあ、原田先生こっちの方がいい?」
「くっ・・・はははっ!やめてくれ!!」
『・・・千ー、これ私が怒られそう。』
「油性マジックを、貸した時点でなまえも共犯よ」
『あはは・・・』
「これに懲りたなら総司と悪戯をするのをそろそろやめろ。」
『私別に総司と一緒に悪戯をしてる訳じゃないんだけどなぁ』
そういった途端千もはじめくんも苦笑いを浮かべたのは言うまでもない。
「ねー、なまえちゃん早く戻っておいでよ土方先生の顔最高だよ」
『えー、左之先生と一緒にもうちょっと書いてて!』
・・・そういえば新八先生はどこに消えたのだろう?
確かさっきまで左之先生と呑んでた筈だけどいつのまにか「今年も俺は何がたりなかったんだぁ!!」なんて、彼女がいないことを嘆いていた声もいつの間にか消えていた。
「しんぱっつぁん俺は呑めねぇって!」
「なに?!平助お前俺の酒が呑めねぇってのか?!」
「俺は未成年っていってんじゃん!!」
「な、永倉先生、平助くん・・・」
あぁ、単に絡む相手がかわっただけらしい。
左之さぁん助けてくれよぉ!!なんて平助の情けない声が聞こえたけれど結構酔ってる左之先生には届かなかったみたいだ。
『どんまい平助・・・』
「・・なまえ、そろそろ帰るぞ」
「あら、もうそんな時間?」
『えぇ、はじめくんもうちょっと居たい・・・』
「駄目だ、何かあれば俺が近藤学長に申し訳が立たん。」
あぁ、そういえば昨日勇さん泣く泣くはじめくんに「なまえをよろしく頼むぞ斎藤くん」なんて言われてたっけ。結婚報告しに来た訳でもないのに勇さんは泣く泣く呑んでいる内に酔いつぶれていた、トシ兄といっしょで下戸なのに。
『そういう所トシ兄にそっくり・・・』
「なっ・・・」
「なまえちゃん帰る前に土方先生の顔見て帰りなよ」
「なまえ中々傑作だぜ・・・くくっ」
あぁ、酔っ払いといたずらっ子は教頭の顔に落書きし終えたらしい
『ちょ、総司これ・・・!』
トシ兄の顔は元の綺麗な顔に原型はなく酷い残状だ。
これは左之先生の笑いが止まらなかった理由も分かるというか・・・
『ここまで起きないトシ兄って・・・』
相当な下戸だよね。
「あーあ、飽きてきちゃった千。僕たちも帰ろっか」
『あれ?平助は助けてあげないの?』
「それは左之先生の役目。」
そう言ってウィンクをしては帰り支度を始める総司を余所に左之先生はやれやれと立ち上がって新八先生の元へと向かうらしい
可哀想に、と苦笑を浮べればはじめくんは悟ったように釣られて苦笑を浮かべては再度帰るぞ、と帰り支度を促してきた
『っ!寒すぎ・・・』
「そんな薄手でいるからだろう、あんたはもっと着込め。」
これでも結構着込んでるんだけどなぁ、なんて内心苦笑いを浮かべながらはじめくんの小言を聞かなくても済むように大人しく下をむいていると急に白くて綺麗な手が見えた。
『・・・はじめくん、』
「・・あんたは目を離すと危険だ」
そう言って目もとを朱色に染めたはじめくんが可愛くて思わず頬を緩めると少し強引に手を取られた
『それにしても騒がしいクリスマスだったね、』
「嗚呼、あの面子が集まれば致し方あるまい」
『あはは、でも楽しかったなぁ』
そう言うとはじめくんが少しだけ微笑んでくれて彼も楽しかったんだってことが伝わってくる
「・・・なまえ、あんたと行きたい場所があるんだが、」
『・・・へ?今から?』
「嗚呼、」
そう言ってはじめくんが歩き出した方向は煌びやかに装飾されている大通りで
『・・ここ、』
「あんたが前に来たいといっていただろう?」
数ヶ月前に雑誌で見かけた通りのそこは
今年は行く暇もないだろうな、と諦めていて
『ねぇ、もしかしてもう帰るぞっていったのもここに連れてきてくれるため?』
「っ、悪いか」
『ふふっ、ううんありがとうはじめくん!』
まさか行けるとは思っていなかった場所に口元が自然に緩めばはじめくんも釣られてか少しだけ口元を緩めてくれて
『・・・・ここね、勇さんが奥さんにプロポーズした場所なんだって』
それはたまたまテレビでここの特集を組んでいてお義父さんとお義母さんが照れくさそうに懐かしい、なんて言っていたのが印象的で
「だから雑誌を熱心に見ていたのか?」
『あはは、だってあまりにも幸せそうだったんだもん!』
「・・・・俺もいつかあんたに、」
『・・・・ん?』
「後ろを向いてはくれないか」
はじめくんの謎の言動に照れてるのかな、と思った私は素直に後ろを向くと
首元にひんやりとした物が触れる
「・・・・やはり、あんたに似合うと思った 」
『え?ネックレス?』
「俺からのクリスマスプレゼントだ」
はじめくん、その顔は反則です!
そう言いたくなるほど真っ赤に染まった耳を見て私まで恥ずかしくなってくる
『大事にするね、』
ありがとう、そう言えばはじめくんはとうとう目を逸らしてしまって
『ふふっ』
「何がおかしい?」
『なんでもない、はいこれ私から』
あまりにも可愛いすぎるからなんて言ったらはじめくんは拗ねるだろうなぁ、なんて思いながら今日のために千は総司のために私ははじめくんのを選んだ包み紙を渡す
「・・・・開けてもいいか?」
頷くと、はじめくんの綺麗な指が包装紙のリボンを解いて
中にあるのは黒のシンプルな長財布だ
学生だから高いものは手に届かないけれど
はじめくんの長財布が少し傷んでいたからいくつか店を回っては色々と見た中で一番はじめくんの好みそうなものを選んだ
「・・・・大切に使う、」
そう言って嬉しそうにしてくれたはじめくんにとても嬉しくて笑顔になると
はじめくんの顔が近づいてきた
「・・・・なまえ、」
『はじめくん・・・・?』
あ、キスされるのかななんて気づいた頃にはもう触れる直前で
「あ、はじめくんなまえ!!ここにいた!!」
『「っ?!」』
「あーあ、平助お取り込み中なの見えなかったの?」
近づいていた距離が一気に離れて
声のした方を急いで見れば
いつもの面子が揃いに揃って(トシ兄と新八先生がいなかったのは気づかなかったことにしよう)
私はその時のはじめくんの顔の赤さ絶対に忘れないと思う
Merry Christmas(ネックレスは綺麗なピンクの石がはめ込まれてて高そうでした。)
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