「光栄に思えなまえ、貴様を・・・」
『はい、ちー様ここはちー様が来るところじゃないから帰ろうね』
「ふん、俺の話を聞け。ツンデレめ」
『黙ろちー様』
放課後の剣道場に突如現れた白い学ランを着た生徒会長は相変わらずのポジティブシンキングというかなんというか、思わずため息も出ない位の俺様具合だ。
「なにしに来たのよ風間。なまえなら渡さないわよ」
「・・・貴様には関係のないことだ。それになまえは俺の嫁になることが決まっている」
『え?いつ決まったの?ねぇ私ちー様のお嫁さんになるなんて言った覚えないよ』
「そんなに照れ隠しをするな、我が嫁」
『ちー様なんてそこのドアの扉に足の小指をぶつけて苦し悶えればいいのに』
あれって地味に痛いよね、地味に。
「なまえもっと言っていいわよ私が許可するわ」
『ちー様なんてそこの柱に頭をぶつけて・・・・ 』
「もう良い。」
あ、ちー様からきのこ生えてる。なんか美味しくなさそう・・・・。
大体はじめくんはトシ兄から任された仕事で、総司はトシ兄の補習で、平助は新八先生の補習で、千鶴ちゃんは薫きゅんに捕まって。
誰も頼りになりそうな頼みの綱がいない今、私は千と2人で婚活男と戦闘中だ。
後輩の剣道部員はこちらをちらちら見てくれてる子達もいるけれど干渉はしてこない。ちー様には関わらないことが一番だと知っているからだ流石剣道部。
『・・・話だけなら聞いてあげるから話してご覧?』
俺は餓鬼ではないとでもいうかと思えば珍しく素直に私の顔を見下ろした彼はゆったりと口を開いた。
「貴様クリスマスイブの夜は開けておけ」
『よし、千そろそろドリンクの用意しようか!』
「そうね、そろそろ斎藤くん辺りが来るんじゃないかしら?」
「おい貴様ら、俺を無視するな」
『あいにく24日は予定が入っているのだよちー様』
そう真顔で告げたときちー様がいる方向ではなくちー様とは真逆の方向に大きな音が聞こえた。
『っ?!あ!はじめくん!!』
何か衝撃的な出来事でもあったのだろうか?目を見開いて硬直している。あ、ちー様が原因かな?
『ちー様のせいではじめくんがふりーずしたじゃないか!!』
「何でもかんでも俺のせいにするな」
ふん、といった様子でものともしないちー様ははじめくんを見てあいつをどうかしたらどうだ、と簡単そうにいうけれどもああいうときのはじめくんは放置して治るのを待つしかない。
『千、ドリンク作りに行こ。』
「そうね、総司くんたちもそろそろ来るでしょうし」
「なまえ!!」
『あ、治った?はじめくん』
私の腕を掴んだはじめくんは真剣そのものというか絶望寸前というか
真顔というかそんな顔をしても私には何も伝わりません!
「なまえ、あんたに話がある」
『ん?』
「・・・その、24日は・・・」
「俺と過ごす予定だ」
『帰ってちー様』
なんなんだ勝手に私の予定を決めないで頂きたい!!
『私は24日実家帰らないといけないし』
「近藤先生の家?」
『うん、雫と翔さみしがってるからって勇さ・・お義父さんがさ』
ゆかりちゃんも私もやっぱりどこか行きづらい近藤家。昔から仲の良い勇さんだし遠慮することもないって分かってはいるものの遠慮してしまうというのが人間というもので、近寄らなかったのを察してくれたのかいないのか勇さんがよんでくれたのに蹴るわけにはいかない、私もトシ兄も勇さんには弱い。
「そう、か・・・」
『・・・はじめくんも来る?』
何気ない一言だったと思う。別に深い意味もないし特に願望もなかった。
けれど、はじめくんは驚いた色を浮かべつつも少し嬉しそうに頷いていた。なんか犬みたいだ。
「しかしながらいきなり訪問しても御両親は大丈夫だろうか」
『事前に言っておくから大丈夫だよ』
「そ、そうか 」
緊張した様子のはじめくんにそんなに固くならなくても平気だからと苦笑を零せば隣にいた千がぽつりとつぶやいた一言に私もはじめくんも固まることになった。
「なんだか結婚のお許しを貰いに行くカップルみたいね 」
「何をいう認めん。」
婚活鬼。(ちー様いい加減帰って!)
(俺は斎藤と浮気など認めん!!)
(浮気っていうかちー様と付き合ってないから!!)
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