女の子なら誰だって好きな人に
好きだって言われたいものだと思う。
だけど、現実はすきな人にきもちを伝えた挙句、 きまずい沈黙が続いている。それは何秒かもしれないし何分かもしれない。わからないけれど、この沈黙は・・・辛い。
「・・・却下だ。」
『・・・・は?』
唐突に切り出してきたはじめくんの言葉にぽかん、としているとはじめくんの腕がこちらに伸びて私の頬に触れる。
「ずっと・・・・た」
『・・・え?』
あまりにも小さいその声に聞き返せば何とも言えない表情に困惑した色が加わる。
「あんたが好きなのは、土方先生ではないのか?」
『・・・え?』
「総司でも、井吹でもないのか?」
『ちょ・・・ちょっと待って?なんでその三人が出てくるの?』
苦しそうに顔を歪めるはじめくんの顔を見つめればはじめくんが更に顔をゆがめるのをただ見つめるしかなかった。
「・・・本当に、」
『・・・本当に?』
「俺だけが・・・」
私の頬に触れる手が強ばるのを、感じる。
綺麗な藍色の目と目が合って、自分の鼓動の音が煩くかんじる。
『はじめくん、』
目の前が真っ暗になってまた三度目の暖かい感覚がした。
「・・・なまえ、すまない。」
なんで、
なんで私は謝られてるんだろう?
あぁ、そうだ。私は、告白したのに却下って言われたんだっけ?
駄目だ、泣きそう・・・。
振ってしまうなら優しくなんてしなくていいのに。
優しすぎるんだよ、はじめくん。
それでもこの腕からぬけだしてしまいたいのに動けない私は卑怯者なのだろうか。
「俺は・・・俺が好いているのは・・・」
これ、前にも同じようなことあったよね。
あのときと違って望みがない私に残された手段は一つしかなかった。
『はじめくん・・・離して?』
「っ、なまえ?」
『ごめんね、変に気を遣わせちゃって』
そう言って笑ってみせたらはじめくんがびくっ、と体を震わせて腕が緩むのを感じた。
『ごめん、ごめんね。』
泣いちゃだめだ。泣いちゃはじめくんが困るから。
はじめくんに背を向けると目的も決めずに逃げるように全力疾走をした。
はじめくんが私を呼ぶ声が聞こえたような気がするけれど、止まることなんてできなかった。
今泣いちゃ駄目だ。駄目だ駄目だ。
わかってはいるのに今笑うことなんて出来ない
そう思って勢い良く角を曲がると誰かと思い切りあたった。
「っと、なまえ?」
『あ、さ、のさん・・・?』
いつもの優しい笑みを浮かべて頭を撫でてくれた左之さんは私の顔をみて少し驚いた表情を浮かべた。
「どうした、こんなとこで。」
『・・・え? 』
「お前ここどこか分かってるか?旧校舎だぞ?」
『あれ・・・こんなに走ってきたんだ私・・・』
「女がこんなところでなにしてんだ、折角の文化祭なのによ」
『あはは・・・ちょっと色々あって、』
苦笑いを浮かべてみせれば左之さんはなにかを察したように優しい表情で目線をそらしてくれた。
「さっき土方さんがなまえのことを探してだぜ?風紀委員の見回りかなんかでお前も斎藤もいねぇって」
『あっ!!忘れてた・・』
「やっぱりな。それにしても斎藤がいねぇってのは珍しいな 」
斎藤、今一番聞きたくない言葉に視界がぼやける。
「斎藤となんかあったのか?」
『・・・へ?なんで・・・?』
「なんでって」
無自覚か?っていった左之さんは呆れてあの人のように私の頬に触れた。
頬に落ちたそれは。(心が痛いと泣き叫んだという証拠 )
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