「ねぇ、トシくん、お願いがあるの」
「あの子達の面倒をよろしくね」
そう伝えられたのは、彼女が亡くなる数日前の事だった。自分の体のことは自分が一番分かっているのだろうか、昔より弱々しく微笑んでいた彼女に俺はただ了承をすることしか出来なかった
なまえの母親には沢山世話になったということもある。昔は近藤さんと2人でよくなまえの相手をしてやるついでに飯をご馳走になったり時には家出の時の避難場所になった。
そんな人の事だから近藤さんも何かをしたいと考えたのだろう。彼女が亡くなった次の日に養子縁組の話を持ちかけたのは近藤さんだった。翔や雫はまだしも、この話に素直に頷かなかったのはなまえで、最終的にも渋々、と言った表現が正しいと言いたくなるような承諾の仕方だった。
なまえにとっては近藤さんは餓鬼の頃から遊んでもらってたある意味兄貴的な存在なのだろう。だからこそ素直に頷けなかった彼女の事を考え吸いなれたそれからあがる紫煙を見つめていた。
なまえとは別に斎藤もまた元気がないように見える。あいつは表情こそ読めねぇが不機嫌な時は身にまとう雰囲気が違う。
あの日、放課後ゆかりから電話が着たときには体の中に氷が注がれた様に冷たくなるのを感じた。溜まってる書類を放置したまま急いでなまえのマンションに行けばそこには斎藤もいて何とも言えない空気が漂っていた。
休学という選択をしてから一度も泣き顔なんて見せなかったなまえが今にも泣きそうな顔を見せていてそんな表情を引き出した当の本人は俺の姿に驚いてやがる。
本当はそうするべきではなかったかもしれねぇ。だけど、今のあいつには斎藤が必要な気がして斎藤ごと病院へと車を走らせた。
「・・・斎藤。」
「土方先生、これは・・」
「201号室だ」
そういっていつもの煙草を加え早くいけ、と目で合図してやるとあいつらしく礼儀をしてから走っていった
勿論、なまえと斎藤が付き合うことを認めたわけではねぇ。なまえは妹みてぇな存在である分簡単に認めるわけがねぇ
ただ、あいつが泣くためには斎藤が必要だ。
そう思ったから行かしただけだ
紫煙をあげながらなまえのおふくろさんやなまえのことが頭によぎった。
あれから2日。なまえは明日から復学予定なのはいいが、正直進学は危うい。書類を見ながらため息を付けば原田が苦笑を浮かべて肩を叩いてきた。
「土方さん、そんな心配しなくてもなまえなら大丈夫だ」
「そうだぜ!なんだってなまえちゃんには斎藤がいるんだしよ!」
「あ゛ぁ?!新八、なんでそこで斎藤が出てくるんだ?!」
「だって、あの二人付き合ってるんじゃねぇのか?」
新八のその言葉に原田はため息をつき俺は書類を握りつぶした
冗談じゃねぇ!
俺が認めねぇ限りなまえをやることなんてしねぇ!!
そう思いながら俺は新八に回し蹴りかました。
公認。(公認なんてそう簡単にはしねぇよ)
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