斎藤 長編 | ナノ


ここは普通のコンビニエンスストアだ。

近くに高校があって学生の通りは多い方だとは思う。20時を過ぎれば仕事帰りのOLにサラリーマンとあまり暇になる事はないバイト先だ。そしていま目の前にいるのは遠くから見ても目立つであろうキンキラキンな金髪に何に対してかは分からないけど根拠のない自信満々なオーラが漂う男。


「貴様はこんなところで何をしている?」
『ち、ちー様久しぶり!』
「答えになっていない 」
『なんでここわかったの?ストーカー?やっぱりストーカー?』
「貴様・・・俺をなめるな。こんなことくらい俺の調査力ならすぐに調べることができる。」
『わぉ、ちー様って怖い』

あぁ、一年ぶりのこの面倒くさい感じ。去年の夏あたりから海外に行っていたこの求婚男・・・もとい生徒会長の風間ちー様。

「久々に学園に戻ってみればこの有様とはな・・・ふっ、俺の嫁になればこんなに苦労しないものを」
『はい、お帰りはそちらの扉ですー!』
「貴様・・・」
『何も買わないなら帰れちー様 』
「ちっ・・・これならいいだろう」

あ、舌打ちした!舌打ち!ちー様は近くにあった三個で143円のみたらし団子をレジに出してきた。143円なんて持ってるのかなちー様なんて小さな疑問が浮かび上がる。だってキンキラキンのお金持ちだよ?

「・・・はやく会計をしろ。」
『143円です!』
「ふん・・・そんな金額か、これで」

ほ、ほ、ほらーーー!来たよカード!!143円にもカードなんてカード無くしたら一文無しなのかちー様・・・そう考えるとなんだか面白い。そんなことを思いながら会計を済ますとちー様は動かない。早く帰れ!帰るんだ!なんて言えずにじーっとちー様を見つめると急に頬を掌で挟まれる。

『むぐっ』
「もう少し色気のある声は出せんのか?」
『うぎゃあああやめてーちー様ああ!』

むぐぐ、とちー様の腕を必死に掴むけどやめる気配がない。隣のレジにいた先輩が少しだけ笑っている気がするのは気の所為ということにしておこう!

「・・・貴様痩せたか。」
『むぐ?!褒め言葉?ねぇちー様!』
「褒めてなどいない、やつれている様にも見えると言う意味でだ。」
『むぐぅ・・・痛いよちー様!!』

最近頬に攻撃が来る気がするのは気の所為だろうか。いや気の所為なことはない!(反語)ちー様は目を閉じて息をゆっくり吐いて「帰る。」なんて言えば自動ドアをくぐっていった。あ!ちー様みたらし団子忘れてる!あれ!食べるよ?

嵐が過ぎ去った後のように静かになった店内に小さくため息が漏れたのだった。


キンキラキン。

(キンキラさんは実はいい人なんです。 )
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