斎藤 長編 | ナノ


「沖田、お前減点5。」
「総司、昨日あれほど新学期からの服装には気をつけろ、と言ったはずだが?」

うるさいなぁ、はじめくん。
もうすぐ、九月に入るのに未だに暑さが厳しい夏休み明けの登校を僕の大事な彼女と出来て機嫌はよかったのに。
相変わらずきちっと制服を着こなす二人が校門の前にたって服装点検をやってる。

「あれ、なまえちゃんは?」
「・・・まだ来ていない。」
「あいつ、初日から遅刻ってなめてんの?」

薫はイライラしてるしはじめくんは気にしてるようだけど情報をつかめていないらしくてしゅん、としていた。はじめくんって時々犬に見えるの、僕だけかな?
隣にいる千になにか知ってる?と聞けばまゆを下げて首を横に振る。

「・・・となると、遅刻か。」

はじめくんは納得したように頷くけれど僕は納得できないなぁ。だって、千の表情は何か隠し事をしたときの表情だったから。

「・・・遅刻、ねぇ。」

まぁ、いいか。可愛い彼女を困らす男なんて最低でしょ?

でも、なまえちゃんは始業式が始まってもLHRが始まっても現れなかった。
初日からさぼりってやるね、なまえちゃんなんてはじめくんに言っていると事情を良く知ってそうな格好の獲物の背中がひとつ。

「あ、土方さーん」
「てめぇ、いい加減先生つけろっていってんだろうが!!」
「そんなことはどうでもいいんですよ、なまえちゃん、どうしたんですか?」
そう言うと土方先生の表情が少しだけ困惑していた

「・・・あいつは、休学だ。」

その言葉が耳に届いたのと同時に、隣にいたはじめくんが固まるのを感じた。

「休学?」
「あぁ、あいつが申し出てきた。」
「へぇー、なまえちゃんいないなら当分いじり相手が減っちゃうじゃないどうしてくれるんですか土方先生?」
「あ゛ぁ?知ったこっちゃねぇよ!」

あーあ。土方さんって本当短気だよね
いつもならはじめくんから小言が入りそうなところだけど当の本人はなまえちゃんが休学っていう事実に余程衝撃を受けたみたいでさっきから1ミリも動いてない。

「・・・・なにゆえ、なまえは休学を?」
「それは言えねぇな。」
「なんでですか、言われると困ることなんですか?」
「あいつから口止めされてんだよ、時が来たら自分の口から話してぇからってよ」
「・・・・そう、ですか。」

もうちょっとしつこく食いつくかと思ったのにはじめくんは案外あっさりと諦めて
あぁ、でも顔は納得した表情にはなってなかったからこれ以上土方さんを困らせないようにだったのかな、それとも理由を知るのがなんとなく怖かったりするのかな
なんて考えてるとはじめくんが小さく部活にいくぞ、総司なんて言うもんだから僕は何となく気乗りしなくてはじめくんと逆方向へ歩いていった。

「おい、総司・・・!」
「んー、なんかはじめくんのそんな表情見てたらやる気なくなってきたから帰るね」

「そんなことが許されると・・・っ!」

残念。
ぼくの中では許されるんだよ

なんてからかって僕はにこにこ、と校門を出た。

この後行くコンビニで待ち受けてることをその時はまだ、予測できなかったんだ

友人Oの供述。

(本当に偶然なんだよ。)
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