斎藤 長編 | ナノ


『こんなん私じゃないと思うんだけどなぁ』

(千曰く)デート当日

あの日千の強制連行によって連れていかれた千の家で千が見立ててくれたワンピース
白いシフォン生地のミニ丈の上にジーンズ素材の半袖の上着
似合うって千は言ってくれたけど正直私はこんなお嬢様タイプの服なんて中々着ない
きっとこんな格好トシ兄なんかに見られたら鼻で笑われるオチだろう。

しかもその上昨日の晩姉が彼氏と喧嘩して家に来て勝手にお酒を持ってきて飲み出して寝落ちするし。
ゆかり、という可愛らしい名前の姉は名前とは違って短気でしっかりしてて口が悪い。
けど無駄に顔が整っているのでモテる。
トシ兄を女にしたら姉のようになるのだろうとひそかに想像しているが実際のところ2人の仲はあまりよくないのでよく分からない。

朝準備をしていると姉がにやにやしながら髪をいじってくれたりメイクをしてくれた。
彼女の夢はヘアメイクアーティストってだけあってやっぱり上手い
髪をゆるく巻いてハーフアップにしてくれた
髪を巻いてくれている間に質問攻めにしてこなければ普通にお礼を言って抱きつくレベルだったのに

姉の質問攻めを友達と遊ぶから!の一言で片付けて急いで逃げてきた私は今待ち合わせ場所のすぐ近くだ。
待ち合わせ時間まであと15分だから少し早く着きすぎた。

一くんの事だからもう待っているのかもしれない、なんてね。と思っていると待ち合わせ場所に近づくに連れて女の子の集団が騒いでいるのをよくみかけるようになった
なにかあったのだろうか?
そう思ってきょろきょろと見回してみるとそこにはおそらく騒ぎの原因がいた。
全身黒で固めていて珍しくスマホを操作している姿はモデルさん並で女子が騒ぐのも納得がいく
声、かけづらいな・・・と思っていると一くんの目線が上がって目が合ったので思わずほっとする私がいた。
『おはよ一くん。』
「あ、ああ・・その服、似合っているな」
・・・唐突に何を言い出すのだこの天然イケメンは。
思わず固まってしまうと一くんが慌ててあたふたしいるのがなんだか可愛くて思わず笑ってしまうと今度は拗ねたように目をそらされた。

「笑うことはないだろう・・・」
『あははっ、ごめんって一くん』
「だが、本当にその服装はあんたににあっている」

少し目もとを紅く染めて一くんが薄く微笑むから私も今更ながら少しだけ照れてきた

『あ、ありがと!ほら、早く行こ!ね?』
照れ隠しに思わず一くんの腕を掴む。
一くんをちらちらと見ていた女の子達がやっぱり彼女いるんだーとか言っているのを聞くと少しだけ謝りたくなる。ごめんなさい、それは誤解です。
どうか斎藤ファンに見つかりませんように!
腕を放すタイミングが掴めなくてそのままショッピングモールに着くと目的のスポーツ用具店を目指すことにした
・・・というか、はじめくん機嫌悪い?
『一くん本当にごめんね?折角の休日つきあわせちゃってさ』
おまけに私の彼氏と勘違いされちゃうし本当に申し訳ない
「いや、どうせ何も予定が無かった故気にするな。」
『彼女作ってデートでもすれば良かったのに

そう言うと少しだけ気まずそうに目をそらされた。なんか、一くんに目をそらされること多いな私。嫌われてるのかな。あれ、そう考えると何故か泣けてきた。

「・・・俺は、俺が好いた者としか付き合いたくない故」
『まぁ、そうだよね。そう言う人いるの?』
何気なく聞いた質問だ。決して深い意味はない。決して。
でも、一くんの足は止まってその時にやっと私も腕を放す事が出来た。
『一くん?おーい』
「・・・俺が好きなのは、あ・・」
一くんが真剣な目で何かを言いかけていたのに一くんのスマホが鳴った。初期設定の音ってのが一くんらしくて思わず吹きそうになった。
「・・・なんだ?嗚呼、・・・嗚呼。話の途中悪いが切るぞ」
適当に返事して切っちゃったよこの人。誰かわかんないけど・・・やっぱり機嫌悪い。眉間のしわがトシ兄並だもの。

『大丈夫なの?もしかして予定入ったとか?』
「いや、そうではなくて、だな・・・総司が暇、らしくてな」
え?いやいや、あの人今頃千といちゃついてるはずだよ?頭にはてなを浮かべていると今度は私のスマホが鳴った。
“なまえ、斎藤くんと本当にスポーツ用品店だけ行って帰ってきたらこれ、ばらまくから覚悟しておいてね?楽しみなさいよ。 千“

添付画像を見ると去年の文化祭でやったメイド姿の私。
え?いやいや、え?千さん。おかしいよね?悪用駄目だよ良くないよ。というかこれ脅しに近いよというか、ほぼ脅しだよ?
思わず硬直していると一くんが不思議に思ったのか大丈夫か?とこえをかけてくれた

『あはは・・・私、明日から学校行けるかな?』
「・・っ?そこまで酷いなにかが送られてきたのか?」
『あ、うん。もういいや』
なるようになるよ。たぶん。 変な開き直り方をするとスポーツ用品店は目の前で中に入って薄桜学園の者です、と伝えるとレジにいたお姉さんが申し訳なさそうにまゆを下げてぺこっと頭を下げられた
「申し訳ありません!全部届くまでもう少し時間がかかるみたいで・・・多分今日の16時には届くと思うんですけど・・・」

『帰るか、一くん!』
「待てなまえ。土方先生の頼まれごとを放って帰ってどうする。」
あと4時間待つなら私は迷わずトシ兄にやらせる。
『・・あー!!時間潰そ一くん!!適当にぶらぶらしよ!!』
これは結局千の思い通りになるのでは、とかもう触れちゃ駄目だよね

「なまえが、いいのなら構わぬが・・」
『とりあえず、お腹すいた!なんか食べない?』
時計を見ると12時過ぎていた。
「そうだな、何か食べるか・・」
そう言って入ったパスタ屋では一くんは騒がれてたし普通に歩いていても声をかけられていた。
この人の彼女になったら苦労するんだろうなぁ。
当の本人はは慣れてるのか気づいてないのか分からないけど何も反応を示さなかったけれど。

一くんも一くんなりに気をつかってくれているみたいで機嫌も直ったみたいで普段より口数が多い気がするし今日の一くんの隣を歩くのは楽しい。


結局。
(一くんの隣歩くの好きなんだ私。)

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