斎藤 長編 | ナノ


『トシ兄のバカ野郎ーーー』
「なまえ、土方先生に非はない。」

地獄の一日目が終わって
ほとんどの部員が疲労と筋肉痛のため動けないという状況におちいった。
そのために今回企画していた肝試しはいつものメンバーしか参加しないことになったのだ

「ま、少数ってのもいいじゃねぇか、楽しもうぜ?なまえ」
『左之先生・・・左之先生が指導してくれたら良かったのに・・』

今回トシ兄はトシ兄の大親友の仕事さんの相手をしてくるため不参加ときた
左之先生が念の為にスタート位置にいてくれて、クジで決まったペアは学校の地下においた人形をとってくれば成功というわけだ

もちろんクジに細工がしてあって、千と総司がペアになるようにしてある

くじを引くと計画通り千と総司がペアになって
一くんとわたし、平助と千鶴ちゃんがペアとなっでこの順番で行くことになった

「よりによって、沖田くんと、か・・」
少し困ったように眉を下げた親友を見て少し申し訳ない気持ちになったけどそこは許してくれるだろう、多分。

「ねぇ、なまえちゃんペア替ってよ。君が千ちゃんとペア組んだら?」
そう不機嫌そうに言ってきた奴は性格が相当ひねくれてて総司の言葉は千の耳にも届いていたと思う。

『嫌だよ、千もわたしもお化け駄目だもん。』
「大丈夫だよなまえちゃんだし」
『何それ、どういうこと?』
「総司、クジで公平に決めたことに文句をいうな。とっとと行け。後ろがつかえている」

一くんそういうと不満そうにしながらも総司は千と少し目を合わせて歩き出した。
もちろん、一くんにもクジに細工がしてあることなんて言っていない。


『千、仲直りのチャンスだからね?』
千に近づいて耳打ちすると
あんた、これ狙ってたでしょ?って苦笑いされた
バレてももう事は進んでいるのだ
どんっと思い切り千の背中を押してやるとさっきより少しだけ気合の入った千の顔が見えた。


「狙っていた、というのはわざと二人をペアにさせたということか?」
『わっ、盗み聞き駄目だよ一くん!!』
「聞こえただけだ。」

しれっと言い訳言う一くんを軽く睨むと一くんが居心地悪そうに目をそらした

「しかし、上手くいくといいが、な・・」
『一くん、あの二人がギクシャクしてる理由知ってるの?』
ふと頭に浮かんだ疑問を問いかけるときまずそうにしていた顔がもっと気まずそうになっていた

「・・昔、総司がある女友達を家に送って言った時に、帰り際女友達の使用人に呼び止められ付いていくと彼女の両親に金を押し付けられこれであの子から身を引け、と言われたことがある・・と聞いたことがある。彼女は裕福な家の子供で総司と彼女の間柄を誤解してのことだろうが総司はその金を投げつけて返した、と言っていた。これは千との事だろう・・きっとな。」

『それで、今までずっと目も極力合わせないようにしてきたってこと?』

「そうかもしれないな・・・、本人たちにしかわからない事ではあるが。」

そう言った一くんの目は少し遠くを見ていた

「おーい、お前ら次行っていいぜ」

そう言われて歩き出すけど、わたし怖いの駄目なんだよね

そう言うと一くんが本当に呆れた表情になった

「なら、何故肝試しなどにした。」
『だーかーら!学校で夏って行ったら肝試しでしょ?』
「意味が分からぬ、あんたの思考は毎回面白いが理解に苦しむな・・・」
ふむ、と本当に考え込んでるこの美少年、殴っていいのだろうか。
殴れば他校の斎藤ファンの方々から命を狙われるだろう、と思ってどうにか押さえ込むが。
うちの女学生が三人しかいない分他校の斎藤ファンの方々怖いんだよね、盲目っていうのかな?ただでさえ部活も一緒、委員会も一緒、クラスも一緒で目つけられてるのに一くんを殴ったとなれば月曜からSP付きで学校に行かないと私は確実に死ぬ。

「っ・・・なまえとまれ。」
『え?なんか出た?ねぇ、一くん霊感あるの?むぐっ』
だって、急に止まれって言われたら怖くなるじゃん。だから質問攻めにして少しは笑いを取ろうかなって思ったら思い切り手で口塞がれるとか無いよ、一くん。
しかも無駄に整ってる顔が近くてやけに緊張してしまう
思わず身体を固めていると千の声が聞こえた
あと、総司の声も。

「君さ、馬鹿だよね。なんで僕につきまとうのさ?」
「それは・・・っ、申し訳なくて」
「あぁ、君の両親のこと?あのお金もらっておけば良かったなぁ」
少し震えてる千の声といつもと変わらない声のトーンの総司の声。
でも、きっといま二人とも酷い顔してるんだと思う、と直感的に思った。

「それで、話したいことはそれだけ?早く人形取って帰ろうよ」

そういったあとに足音が聞こえたけど、一人分の足音だけで
頑張れ千、って何回も心の中で叫んだ

「・・・総司、くん。」
「・・っ。」
「好きなの・・・好きじゃなきゃここまで追っかけないわよ!!」

声がやんでしばらく静寂が続く。

「君さ、本当に馬鹿だよね」
「・・そう、かもね。」
「また僕は君の重荷にないのにさ。君から離れていくかもしれないし」
「重荷になんて、なったことないわよ、馬鹿・・・っ」
明らかにもう千のこえは泣く寸前の女の子の声だ。 一くんに目で訴えるけど一くんは首を横に振っただけだった

「・・好きだよ、僕も。」

その言葉を聞いたとき言われたのは私じゃないのに体から力が抜けるのを感じた
なんだか信じれなくて一くんのほうを見ると一くんが微笑んでいたからきっとこれは現実だ。

よかった。そう思ったとき後ろから声がした

「お、なまえと一くんじゃん!何してんのー?」

「・・・なまえ?」

平助は、どうやら死にたい願望があるらしい。

「へぇ、盗み聞きとは感心しないなぁ二人とも」

そうにっこりと笑う総司をみて思わず冷や汗が額を伝った

想い。

(今成就。)
prev next



- ナノ -