沖田短編 | ナノ


  失恋から始まる恋。


千鶴ちゃんは、可愛い。

誰に言った訳でもなくそう呟くと総司が何言ってるの?って目でこちらを見る

千鶴ちゃんは女の私から見ても可愛いと思うんだ
いつもにこにこと笑っていて困った時にはちゃんとまゆを下げてわたわたして
気が利いて大人しくてでも根暗でもなくうるさくもなく
そんな千鶴ちゃんは本当可愛い。
今時珍しいタイプの女の子だ

「まぁ、なまえとは逆のタイプだよね」
軽く失礼なことを言われた気もしなくはないが事実だから反論のしようがない。

『私もあんな子に産まれたかったなぁ・・・』

こんなことを考えてしまうのは昨日、たまたま片思い中だった土方先生とその横を歩く綺麗な女の人を見かけてしまったからだろう。
昨日の夜は泣きながら総司に電話したから今日の朝はなんだか総司が優しかった。

「千鶴ちゃんみたいななまえって気持ち悪いや」
けらけらと笑うこのイケメンの腕を殴ると軽く顔をしかめたけどまたすぐにいつものよく読めない表情に戻った

「千鶴ちゃんみたいな女の子になりたいなんて考える前にさ、なまえみたいな子を受けいれてくれそうな男探しなよ」

『そんな男の人いーるーのーかーなーあーあー。』
もうやけになってきてあ゛ーと椅子の背もたれに背をかけながら伸びると総司の無駄に整った顔が近くにあった

「新八さんとかは?ほら、あの人なら女の子誰でも良さそうだし」
『ごめん、私が無理』
「なら、一くん。難易度高いと思うけど」
『斎藤くんってさ、彼女作る気配ないよね』
「んー、左之さんとか?まぁ、これも難易度高いと思うけど。」
『わたしタラシ嫌い』
「もういっそのこと平助は?」
『年下嫌い』
ことごとく斬っていくと総司がやれやれという顔でちょこの包み紙を外して私の口に入れてくれた。

「なら、僕は?」

『は?』

あまりにも意外な展開に思考停止状態に陥る。
いつものように冗談だよ馬鹿だね、とけらけらと笑ってくれることを期待して待つけれど幾ら経ってもそんなことを言ってくれる気配すらない

「ねぇ、僕だったらどうなのさ?」
『総司、意地悪。』
「でも僕と話すの嫌いじゃないでしよ?」
よくよく考えてみれば一番楽に話せるのは総司だ。・・・ってそういうわけではなく
昨日私は失恋したばっかなのに。
「僕、土方先生忘れさせてあげるくらいの自信は有るけどなぁ」

そう言った顔が真剣なのに気づいてからすぐ顔に熱が集まるのを感じた
今私の顔は真っ赤なんだろう

「んで、付き合う?付き合わない?」
『・・・付き合います。』

思わずそう言ってしまうと総司はにや、と笑ってよろしくね、なまえと頬を撫でて机にうつぶせて寝始めた

急過ぎてついていかない思考回路を整理しながら思わず嬉しくて口元が緩む。

本当はどこかでずっと総司に、恋してたのかもしれない。なんてね。

失恋から始まる恋。

(これで断られてたら本気で立ち直れなかったかも。)


2014.0403


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