その二人、前へ。
いつからだったのだろう?
『愛してる』
この言葉が嘘に聞こえてしまった頃は
その二人、前へ。また、まただ。
なんでそんなに泣くの?
わたしはもう弱くないのに
小さい頃の私はしゃがんでわんわん泣いている。
私はそれを助けることもなく
目をそむける事も出来ずに
ただ、見つめていた。
『おかあさん、おかあさん、』
嗚呼、貴女にお母さんなんて存在はいないのに。
「すきだよ、」
誰?
「助けてあげれなくてごめんね」
・・・総司くん?
嗚呼、なんてタイミングなんだろう
目を開ければ珍しく胡散臭い笑顔を崩したあの男がいて
頬に何か伝っているのを感じたから私はまた泣いたのだろうか?
「・・・涙、」
そう言って少しぶっきらぼうに涙を拭ってくれた総司くんは、どこか優しくて
『・・・ごめん、』
「・・・なまえちゃん?」
『ごめんなさ、い。』
「・・なぁに?君らしくない 」
頭を撫でて抱き寄せてくれた総司くんの声色は相変わらず変わらない声色で
普段なら蹴りをいれてやろうか、なんて考えるのに今の私はどうも彼にいつもの様に接することができないらしい。
「いつもそうやって可愛くいればいいのにさ」
『・・・うるさいなぁ。』
「あ、またかわいげなくなってる。」
『可愛げない私は、嫌い? 』
そんなことを言おうと思ったわけではないのに、なんで。
見上げればやっぱり驚いた目の総司くんがいて、慌てて否定をしようと口を開けば頬をなにかが包む感触があった。
「・・・好きだよ」
『総司く、』
「なまえちゃん、好きだよ。」
なんで、なんでこんなにも私と向き合おうとしてくれるのだろう
「だからもう、そんな顔しないで」
総司くんの言葉ひとつでなんでここまで救われるのだろう
「・・・総司、みょうじここにいたのか」
『っ、斎藤くん?!』
「あれ、はじめくんなんでいるのさ」
「土方先生に言付かってお前らを迎えに来た、早く授業に戻るぞ」
「あーあ、土方先生って本当邪魔するのが趣味だよね」
「みょうじ、立てるか?」
『斎藤くん、ごめんねありがとう 』
斎藤くんが差し出してきた手を借りると後ろから衝撃があって、振り向こうとすれば重量によって動くことができない。
『総司くん、』
「ねぇ、はじめくん。僕の彼女に手を出すなんてひどいんじゃない?」
「何を言っている、あんたが手放したのだろう。」
『は、え?』
「もう手放さないよ、」
そういった総司くんの声は真剣そのもので、
なんて反応をすれば迷っている瞬間にも総司くんが私の手を引っ張っていくものだから
斎藤くんが、やっと仲直りをしたのか、とため息をついていたことなんて知る余地もなかった。
「ねぇ、なまえちゃん」
『なに?っていうか、総司くん。この手を離して?』
「嫌だ。」
子供みたいに頬をふくらませて拒否する総司くんが可愛くみえてしまう。
「ねぇ、なまえちゃん」
『なに?』
「さっきの、本気だからね」
そう言ってこちらを見てきた総司くんの言った意味を考えて理解できた頃には私の頬は自覚できるくらい真っ赤に染まっていたのだった
To be continued...
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