口移しするたからもの
ダアトの商店街でいつものスイーツ巡りをしていたら、何か目玉商品が売っているようだった。
近付いてみると……飴玉の詰め合わせのようだった。
赤いの、黄色いの、桃色の、紫色の……。
色から味が想像できるものが入っていたがただ一つ、なんの味か全く想像できないものが入っていた。
「お姉さん、これ、この青い飴玉なんですか?」
分からなくて店員さんに聞いたら、彼女は「ああ、これが目玉商品の理由だよ。」と説明を始めてくれた。
「なんでも、ソーダっていう変わった飲み物の味らしいよ。」
「ソーダ?どういう味なんですか?」
「さあ、私は実際に飲んだことは無いから噂で聞いた通りに答えるけど……。しゅわしゅわして甘いらしいよ?」
「しゅわしゅわして……甘い……」
なんだか、面白そう。
私は興味が出て、その宝石がつまった宝箱のような飴玉の詰め合わせを買っていった。
「ただいま〜。」
「ああ、おかえりなさいフィオナ。少し遅かったですねぇ。」
ディストの研究室に入ると、相変わらず彼は譜業の改造を施していた。
彼に疲れてないの?と問い掛けると、疲れていませんよ。と平然と返してきた。
……こういう好きなことは全然疲れないのよね、ディストは。まぁ、気持ちは分かるけど。
私は早速買ってきた飴玉の詰め合わせを開き、気になっていた『ソーダ味』の飴玉を取り出す。
照明にかざすと、キラキラと青色に透けて輝いていた。珊瑚礁の海みたいで綺麗。
透明な包装を開いて飴玉を口に入れると、瞬間、しゅわりと泡立つような感触。そして、ふんわり広がる甘味。
生まれて初めて感じた感触で驚いたけど、すぐに面白いと感じて、
譜業の改造にいそしむ彼に教えてあげたくなる。
「ねえディスト!こっち向いてよ!」
「何ですか?私は忙しいんですよ。」
こっちを向いてくれたディストの肩にポンと手を乗せて、
「ちょっと失礼。」
そのまま彼に口付けた。
「んっ……!」
彼はぎょっと驚いた顔して、慌てて身を引こうとするが、すかさず彼の後頭部に手を回して引き寄せた。
ぺろ、と唇を舐めると彼は驚きからか口を少し開いていたから、そのまま飴玉を彼の口内へと移した。
そうした後、私は潔く口を離す。
「……な、フィオナ!い、いきなり何をするんですかっ!!しかも、何か入れましたね!?」
ディストは頬を微かに赤く染めながら、私が口内に入れた飴玉を探っているようだった。
「うん。おいしいでしょそれ。」
「……あ……はい。口の中で泡立っていて…甘いですね。これは……?」
そう首をかしげる彼に笑みをこぼしながら、その"たからもの"の正体を教えてあげる。
「それ、ソーダ味の飴玉だよ。」
「ソーダ味……。聞いたことがないですねぇ……。」
「でしょー?私も聞いたことなかった。元の飲み物も、しゅわしゅわしてて甘い飲み物らしいよ。」
「なるほど……」
一瞬納得したようなディストだったが、彼は慌ててかぶりを振る。
「というかあなた……あんな渡し方しか出来なかったんですか!?」
「あら、私とキスするのは嫌だった?」
「……そ、そんなことは……!」
今度は別の意味で首を振ったディストの顔は、真っ赤だった。
それが面白くてクスクスと笑っていると、彼が喚き出したものだからごめんごめんと軽く謝った。
――――――――――
そういえばテイルズ世界にソーダグミという存在があったと思い出したのは書き終わってからの事でした。うっかり。
ちゅーされてあわあわするディスト様が書きたかったのです。