停電






────バツン。




「あ」


「は?」


バクラと二人でテレビを見ながらゴロゴロしていた所、電気が突然消えた。
ブレーカーが落ちたかな、と思って懐中電灯を持ち玄関のブレーカーの所まで行って、その辺にある傘を使ってなんとか復旧させようとするけど、レバーを上げても電気が点かない。どうしたものか…。


「電気、点かねぇのか」


「!?!?」


突然すぐ後ろから聞こえたバクラの声。
足音はしなかった。まさか気配を消して私のすぐ側に!?
…と、思ったがよく聞くと外はごうごうと風が唸りを上げていて、もしかしたら風で電線が切れたから停電したのかも、と納得した。バクラの気配がしなかったのも、きっと足音が風の音で掻き消されたせいだ。そう信じたい。


「停電…みたいだね。どうしようか」


「こう暗くちゃ何も出来ねぇな。決闘も難しいだろうよ」


「テレビも点かないしね…はあ…」



どうしたものか。
しかもこの懐中電灯がなければ相手の姿を確認し合う事もできない。
そんな思いも込めてため息を吐いていた所、バクラに突然手を引っ張られる。
彼はそのままぐいぐいと私を連れて歩いていく。


「何?バクラ、何?」


「寝る」


連れてこられた先で、ボフンと音がする。
それと同時に、私の頬に柔らかい感触がした。


「え、ここベッド?ちょ、いきなり、なんで」


「真っ暗で何もやることねーんだから後は寝るくらいしかやることねーだろ」


多分布団だろうものを上に被せられ、バクラに抱きしめられる。
バクラの匂いと体温を直に感じて、心臓がドキドキとうるさくなる。
その鼓動は彼にも伝わったのか、ククッ、と笑い声が聞こえた。


「緊張してんのか?フィオナ……それとも、何を期待している?」


そっと頬を撫でられ、びくりと肩を揺らした。
少し顔を上げると私も暗闇に目が慣れてきたのか、バクラの顔がうすぼんやりと見えてきた。やっぱり笑いながら私の顔を見つめている。


「な、なんにも?期待してないよ」


「どうだかな…」


バクラの顔が近づいてきて、イタズラするかのように私の首筋に口をつけると、ペロリと舐めた。


「んあ、ちょっと…!」


彼に舐められた所から痺れが走り、抵抗の声に甘さが混ざってしまう。その反応を見てかバクラは子猫のように首筋を舐め続けた。
やばい、このままではやばい。過去にも何回かこんな事があったが、大体そのまま行為にずるずると持っていかれ食べられてしまった。だからこのままいくと、やばい。


「やだ、だめ、バクラ…もう寝よう…?」


なんとか彼を諭して身体を離そうと彼の胸に手を当て押すが、びくともしない。
それどころかもっと腰を抱き寄せられ、首筋に軽く歯を立てられる始末。チリッ、と小さく痛みが走った。


「いっ…!ん、痛、やだ…」


私が悲鳴を上げると、バクラはくつくつと喉で笑って首筋から顔を上げ、私の頭を掴んでそのまま口付けてきた。


「っん…ぅ…っ…」


最初はくっついて離れるようなキスを繰り返していたが、ずるりと唇を割って彼の舌が入り込み、歯列をなぞって私の口内に入ってくる。
それに驚いて離れようとしたけれど、彼のグッと頭を掴む力が強くなって、やっぱり逃げられない。


「ぁ、…ふ…っんん」


くちゅ、ぴちゃ、とわざと音を立てるように蠢くぬるぬるとした舌に口内を犯され、大きな手に髪の毛をくしゃくしゃにかき混ぜられる。

あ、もうだめだ
酸素も足りなくて、頭がぼんやりする。
ぽわぽわした思考の状態で最後の抵抗に、と彼の胸を力なく押すと、やっと口を解放してくれた。
ぷは、と私は酸素を肺いっぱいに取り込む。
その様子を見て彼が愉快そうに口元を三日月みたいに歪めたのが、見えた。


「最初は普通に一緒に寝てやろうかと思ったがな…すっかり熱が上がっちまったぜ。夜もまだまだ長いからな」


バクラが私の上に組み敷くように乗り、ギラギラとした目で私を見下ろす。


「ヤらせろ、フィオナ」


ああ、結局こうなってしまうのね。
もうこうなっては彼を止められないから、私はため息を吐いて首に腕を回す。
また彼の、愉快そうな笑い声が聞こえた。



――――――――――


裏になりそうだったけれどなんとか微裏に留めました。
なんだかバクラにはやりたがりのイメージがあります…
ところでバクラの歯って鋭くておっかないですよね。噛まれたら痛そう。




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