大嫌い、大好き






私は、青臭いにおいはキライ。


けれどなぜかな、私の足はひとりでに青臭さのきつい部屋へ向かっている。

白い内装と、似たような通路が続く初めて来た人なら迷ってしまいそうなこの病院のような場所を迷うことなく。


ピタリ、と


……ある扉の前で止まる。
私の手は、惹かれるようにドアのノブを掴んでゆっくり回し、部屋の中に入った。


……つんと、私の嫌いな臭いが鼻をついた。



「いらっしゃい………また、君なんだね。」


ベッドにはその臭いの元の……病人服に身を包み頭から緑の液体の点滴を受けている少年がいた。


その少年は儚げな笑みを浮かべて私を見つめている。


「……ねえ、青汁くん」


彼が名乗り出なかったことと、この青臭さから私は彼を青汁くんと呼んでいる。
彼はそう呼ばれても嫌な顔は一切しなかった。


「これは私の夢で……あなたを青汁くんと呼んでもあなたは怒らない。都合がいい。……それが夢のはずなのに、どうしてあなたは青臭いの?私の嫌な臭いがするの?」


これは夢。
私の都合のいいように出来てる。
……きっと彼は私に都合のよい答えを返してくれるというのに、こんな質問をした私は馬鹿げているなと自嘲した。


「フィオナ」


びく、と私は一瞬肩を跳ねさせた。
だって、私は彼の前で一度も名乗ったことがない。
……と驚いたが、よく考えたら私の夢に出てくる登場人物なんだから私の名前くらい知っていても当然じゃないか、という結論に至って真顔に戻った。


「君が、夢だから都合のいいようになると思っているのなら…それは間違いだよ。」


考えを見透かされたの?
ギクリとして彼を凝視する。


「夢は確かに楽しかったり、都合のいいようになったりすることもあるけれど……逆に、そうならないこともある。怖いこと、理不尽なこと。それもあり得るんだよ。」


……彼の、言う通りだった。
黒く、赤い目の化け物。
笑っているのに、感情がわからないピエロ。


みんな怖い。追いかけてくるし。


こいつらに限らず、凶器を向けたら、逆に私が貫かれて嫌な汗にまみれて目を覚ますこともあった。



思い出したら、目から涙が溢れて止まらない。


震えて泣いていると、それを見かねたように、青汁くんが「おいで」と手招きする。


また足がふらふら動いて、彼の薄い胸へとダイブする。
そして青臭いにおいはさらに鼻を刺激した。



「辛かったら、いつでもおいでよ。僕もずっと病室にいて暇だし。……君がイライラしているのなら、力任せにそのチェーンソーで刺されたって構わない。」


僕は夢の住人で、君が夢を見る度復活できる。
そんな台詞と共に背中を撫でられて、なんだか胸が締まる。


「馬鹿……そんなことしたら、私の嫌いな臭いがさらに濃くなる。服についたら嫌だし。」


「そっか……そうかもね」


ああ、なんて素直じゃないんだ。
彼が微かに辛そうな影を落としたじゃないか。



……半分本音で、半分嘘。最初言った通り、青臭いのは嫌い。
でもね、本当はあなたが好きだから。あなただけは、刺したくなかったから。
あなたの前じゃチェーンソーを使えない。


彼の胸で啜り泣いて、気付けば私は意識を手放していて。


次に目が覚めたのは、陰気な私の部屋だった。


虚ろな意識で窓を見ると、きれいな朝日が見えた。



「…………朝。」


珍しく普通の人間と同じような時間に起きた。
けれどまた、あの強い青臭いのが恋しくなって布団に潜った。


3秒数えればほら、また私の夢の世界。
大嫌いで、大好きな青臭いあなたに会いに行くの。











───────────





ゆめ2っきの青汁くんの夢でした。
……マイナーなのは分かってます。けど、ゆめ2っき面白いですよ。

最近のは実況動画などで確認しているのみで自分で出来ていないので、今も青汁くんがあの病院にいるのかは分かりませんが……。

あの薄暗い病室で、ほったらかしみたいにされてるの物悲しいですよね( ノД`)
そしてなぜ青汁点滴されているのか。永久の謎にして彼の最大の魅力であります。




prev| next









「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -