7.くるくる回る1日
……で。
あの後結局私は商店街の近くにあった空き家を(ちゃんと許可を得て)借りて生活し始めた。
そして、家賃やら研究資金を稼ぐ先は……。
「いらっしゃいませー!2名様ですか?こちらの席へどうぞー!」
お昼の酒場のウェイトレス!
昼間はまだお酒出さないらしいからね。私にぴったりだもの!
まぁそんな感じで、順調な生活をスタートしたのであった!
で、夕方は……。
「ここは関係者以外、立ち入り禁止です。」
「あー、はいはい。私関係者よ。ほい。」
さっ!とバッグから証明書カードを取り出す。
「確かに。通っていいですよ。」
そうしたら、警備員の人は退いてくれる。控えおろー!みたいで楽しいよね。
帝国譜術・譜業研究院の施設に入った私は、今日もフォミクリー研究に勤しむ二人の部屋を目指す。
「やぁーこんにちは!今日も私参上ですよー♪」
と、声も高らかに部屋に入る。
「……キュビットか。相変わらず騒がしいな……」
「キュビット!待ってたよ!」
……なんか二人の幼馴染みの反応の温度差があって苦笑いしちゃうけど、一応この二人も元気です。
……サフィールは頑張りすぎて、眼鏡かけるようになっちゃったけど。
「ねえ二人とも、軍事訓練ってやっぱ大変?」
音機関を組み立てながら、サフィールとジェイドに尋ねた。
何でもこの二人、昼間はやっぱ士官学校らしく軍事訓練を受けているらしい。
「大変っていえば大変だけど……。僕は平気だ。」
「ぼ、僕もこれくらいでへばってられないもん!」
ほうほう、ジェイドは余裕で、サフィールはギリギリかぁ……。
「なるほど〜。二人とも頑張ってるんだね!いやー、感心感心。」
そう頷いていると、ジェイドに「何様のつもりだよ……」と呆れたように言われたけどまぁ、気にしない。
「キュビットは?働きながら一人暮らししてるんだよね。……寂しくないの?」
サフィールは私を心配するような顔でそう尋ねてきた。
「やだなぁ、サフィールじゃないんだから、寂しくないよ。」
はは、と乾いた笑いを混ぜてそう返すと、サフィールは「ひどいや!」と拗ねたようにそっぽを向いた。
……でも、本当は寂しいんだよなぁ。パスカル師匠、里のみんな、シェリア達……また会いたいんだ。
そんなことは、今目の前にいるこの二人には言えなくて。
……夜は、何してると思う?
「……実用するとしたら、やっぱ第七音素かな……。んや、でも…。」
相変わらず、自分の世界に帰るための研究だよ。
「第七音素を使用して、疑似超振動起こして自分の身体バラバラにして、エフィネアに到着したら再構築されればいいんだけど……。向こうで音素効くか分からないからなぁ……。そうなると生きるか死ぬかの博打になるし、もっと別の方法とりたい……。」
まあ、この通り難航しておりまして…。
何度も書き直したり消したりして、ぐしゃぐしゃになったノートをパタリ、と閉じてペンを置いた。
そして、ふか〜いため息をひとつ。ああ、私らしくない。
……え?こんな調子でいつ休んでるか、だって?
大丈夫大丈夫。一週間のうち2日は、お仕事もフォミクリー研究もお休みするって連絡入れてる。
この2日のうちにゆっくり羽伸ばしたり、自分の研究に集中できるわけ。
一応このスケジュールでもうかれこれ半年近く過ごしてるけど、倒れてないから大丈夫。
……と、いうのが数年後フラグになっているとは、その時の私は思いもしなかったのであった。
くるくる回る1日
フラグは次の話で回収←早
ハイテンポで進んでいきます。
あとジェイドの眼鏡については出会ったときからかけていたのでスルー。(サフィールのは視力低下のためだと思われ)