8.異変
ND2000――。
17歳になったよ。キュビットです。
去年あたりにジェイドとサフィールが士官学校を卒業して、もっと長い時間研究ができるようになったんだよね。
だから、今日も研究に精を出していくぞー!
「やあ、今日もよろしくサフィール!」
「え、ええ。……よろしくお願いします、キュビット。」
……みなさん、お気付きになっただろうか。
そう!サフィールが私に敬語使うようになったんだよ!
なんかいつからか、私に対してよそよそしくなって、敬語使い始めたの!一体なんなんだか。
ぶー、とぶちゃむくれた顔をしていると、「また拗ねているのか?」とジェイドにからかわれた。
「拗ねてるっちゃあ拗ねてる!なんでジェイドに対しては昔通りで、私に対しては敬語なのかなぁ!」
ごつん!とサフィールの額を突っつきながら言った。
「ちょ、痛い!何するんですか!」
「なんで?なんでなの?」
「…どうでもいいでしょう!その事はもう突っ込まないでください!!」
至近距離まで詰め寄ったが、サフィールは逃げてしまった。
ちくしょー。
……また寂しい要因増えちゃったじゃないか。
「……意識、し過ぎだと思うんだがな……。」
ポツリ、とジェイドが溢した言葉はキュビットの耳には届かなかった。
まぁそんなある日の事である。
異変は、私にも現れた。
今日、起きたときから私の身体は重たかった。
そして、お仕事先の店長にも分かるくらい、顔色が悪かったようだ。
それでも私は仕事を続けて、夕方にはジェイド達と研究をしていた。
「……あの……キュビット…。」
サフィールが眉を八の字に下げて、まるでとても心配しているような顔で私に声を掛けてきた。
「……サフィールまで私の顔色が悪いって言うの?私は別に、大丈夫だって、ば……」
否定した瞬間、ぐにゃりと視界が歪んだ。
ああ、かっこ悪いなぁ。
棒になったような足では体重を支えられず、重力に沿って、私の身体は床へと崩れ落ちる。
最後にサフィールの叫び声が聞こえて、私の視界は黒く塗りつぶされた。
「キュビット!キュビット!……ダメだ、返事がない!!」
サフィールはキュビットを抱き起こしながら呼び掛けた。が、彼女は目を開かない。
ジェイドも駆け寄って、彼女の額に手を当てるが、すぐに手を離した。
「っ!すごい熱だ……。もしかしたら、疲れが溜まっていたのかもしれないな。」
「ジェイド、僕、今日はキュビットの看病するよ。いいよね?」
「ああ。上の奴らには僕から伝えておく。」
「ありがとう!」
サフィールはキュビットを背負って、彼女の自宅へ運び入れた。
……が。彼女の部屋は足の踏み場も無いほど散らかっていた。
「これは……酷すぎる……。」
サフィールはその状態に四苦八苦しながらもなんとかベッドに辿り着き、彼女をベッドに寝かせる。
彼はその横で疲れたように座り込んだ。
「……はあ……。こんな足の踏み場も無い状態じゃ、看病するのにも支障が出ますね。少し、片付けてあげますか……。」
サフィールは彼女の看病もしつつ、部屋を片付け始めた。
まずは足場を確保し、次は机……。
そこでサフィールは、机の上にあるノートを見つける。
「これはなんでしょう……?異世界飛行理論……?」
パラパラとノートを捲ると、何度も修正がなされていたり、走り書きのような字の数々。
しかし内容は、サフィールを驚愕させるものだった。
「……身体を一度粒子化・分解し、異世界に送る……!?あなたは一体何を考えているんですか、キュビット……!」
サフィールはキュビットの方を向くが、彼女は答えない。
相変わらず苦しそうに息をしているだけだった。
異変
よそよそしくなっていくサフィール。敬語になっちゃいました。
ジェイドの言うとおり意識しすぎのようだ。意識しすぎモード。
でもやる時はやる。
で、夢主の素性ばれちゃいました。
さあどうなるのやら。