5.蘇る記憶






ND1994――。



事件は、突然起こった。
これはそう……。私が部屋でいつもの譜業の勉強をしていた時だった。



気付いたら私は、熱い風に飲まれて家の外に投げ出されていた。


じくじくと痛む身体でなんとか家の方に目を向けると、家は炎を吹き上げ、真っ赤に燃えていた。


……ああ……。爆風に吹き飛ばされたんだ……。


その赤を最後に、なぜ家が燃えているのかも分からないまま私の視界はブラックアウトした。
















『キュビット!今日はこういうの作ってみよう!きっと楽しいよー?』


私と、おんなじ。
ちょっと珍しい色の髪。
天真爛漫な笑顔。




この人は……確か……パスカル、師匠……?



そうだ。
パスカル師匠は、アンマルチア族。私も、同じ…。






『キュビット、今日はあなたにプレゼントがあるのよ。このお洋服、可愛いでしょ?』


『シェリア……。それ、ブリブリし過ぎてないか?』


『ブリブリし過ぎてるけど……きっと、キュビットに似合うよ。』


『アスベル!ソフィまで!……もう。そんなに言うなら、少しだけフリル取るわよ……。』



シェリア、アスベル、ソフィ……。
大切なお友達……大切な……エフィネアの………!











「……はぁっ!!」


思い出した。
私は……私は……オールドラントの人間じゃない。


エフィネアって世界の、アンマルチア族の一人なんだ。



「キュビット!目が覚めたんだね!よかったぁぁあ……!!よかったよぉぉぉ!」


と、泣きついてきたのは包帯だらけのサフィールだった。
そしてサフィールの隣には、同じく包帯だらけのジェイドが座っていた。


私も身を起こそうとしたけど、身体に痛みが走って起き上がれなかった。
……よく見れば私も包帯だらけだった。どうやらここは、病院らしい。



「……よく、生きてたよね。僕も、キュビットもサフィールも。」


ジェイドが目を伏せながら言った。……あ、そうだ!


「ゲルダさん……!そういえば、ゲルダさんは!?」


私がそう聞くと、二人とも俯いて押し黙る。


「……まさか……死んじゃった……!?」


「……ジェイドが、ネビリム先生のレプリカを作ろうとしたけど、失敗して……それで……!!」


「……レプリカ、って何?」


聞き覚えのない言葉に、私は首をかしげた。
そしたらジェイドは、「そういえば君は知らなかったね」とレプリカについて教えてくれた。


私がケテルブルクで発見される1年程前に、ネフリーのお人形さんが壊れたらしい。
そこでジェイドが譜術・フォミクリーで、そのお人形さんの模造品……レプリカを作ったんだって。へー。


「……ってことは、そのフォミクリーをゲルダさんに転用したんだね。でも何かがいけなくて……死んじゃった?」


「いや、レプリカは生きてる。失敗作だったから殺そうとしたけど……逃げられた。被験者は……。」


「本物は……死んじゃったんだね……。」


ゲルダさん……。
私のお姉さんみたいで、お母さんみたいで……第二の師匠。


……あっ、やばい。視界が潤んできた。


「ごめん、ごめんね、キュビット……。ジェイドと僕が、フォミクリー研究もっと頑張って、ネビリム先生を復活させるから……!泣かないでよ……。」


サフィールが泣きそうな顔でそう言ってきたが。


「な、泣いてなんか、ない……よ……。……って、ちょっと待ってサフィール、今なんて言った?」


「えっ?だから、ジェイドと僕で、フォミクリー研究を……。」


そうそれ!
涙を拭いてビシィ!とサフィールに指さすと、サフィールとジェイドはポカーンとした顔をした。


「まぁたそんな面白そうな事、二人だけでやって!私も混ぜてよ!」


「……またか……このじゃじゃ馬……。」


「ジェイドうっさい!だってアンマルチアの血が騒いで……」


「あんまるちあ……?」


サフィールがきょとんと首をかしげた。あ、やばっ。
二人とも私がオールドラント人じゃないこと知らないんだ。今は隠しておこう。


「あはは!何でもない!」


「……まあ、とりあえず……。キュビットはそこそこ頭いいから、一応居てくれると助かるね。僕は先にフォミクリー研究のために、カーティス家に養子に行く。そうすれば、資金や設備に困らなくなるからね。」



ガタ、とジェイドは席を立った。
サフィールが説明してくれたが、どうやらカーティス家への出発は一週間後らしかった。



「サフィールはどうする?」


「うん……。しばらくはここに残って、個人的に研究するよ。ジェイドに着いていきたいけど……。」


「……準備期間ってわけだね。分かった。協力するよ。」







こうしてしばらくの間、私とサフィールは共に譜業作りの腕を磨きつつ、フォミクリー研究に勤しんだ。







蘇る記憶






例の事件が起こりました。雪国組の運命が大きく変わる。
そして、夢主の記憶が蘇りましたな。
一応幼少時代の服の成り立ちも分かる話でした。シェリア作なんですよあれ。


ここからは夢主やサフィール、ジェイドの成長をじわじわ?ざっくり?追っていく感じになっていきます。




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