2.初めての友達
ゲルダさんは、私塾で先生をしているらしい。
彼女は、そう話してくれた。
彼女の部屋の本棚にはたくさん本が入っていて、ゲルダさんがいない間、読んでいていいかと聞いたら「もちろん」と返してくれた。
……が、本を開けば見たことのない文字の羅列。
文字も思い出せないなんて……。
困った私は、しばらくゲルダさんに本を読んでもらって、この……フォニック言語と文字を覚えた。
そのうち、色んな本を読むようになり、興味がつきなかった私はこっそりゲルダさんの部屋を抜け出し、彼女が私塾をしている部屋に近づく。
このオールドラントの歴史の話、たまに聞こえてくるちょっと難しい話。
静かになってる時はみんなもノート取ってる時間なのかな?
私も部屋の外でゲルダさんの話を聞きながら、ノートを取った。
「……キュビット?こんなところでどうしたの?」
「ひゃっ!?」
いきなり声をかけられ、肩をびくつかせた。
しかも、声をかけた人物がゲルダさんだったからさらに驚く。
「ゲルダさん、これは、ちょっと、興味があっただけで……!!」
あわあわと顔の前で手を振ると、ゲルダさんはノートを覗き込んで、「あら!」と声を上げた。
「フォニック文字、書けるようになったのね!驚いたわ、こんな短期間で……。この前まで文字を知らなかったのに。」
「えっ!え、え!?気付いてたの!?」
「ええ。キュビット、偉いわね。あなたは何か才能があるのかもしれないわ。」
「才能……。」
ぽかん、とゲルダさんを見ていると、ゲルダさんはちょいちょいと手招きした。
こてん、と首をかしげると彼女は微笑んで、
「あなたも、私のところで学んでみない?あなたには意欲があるから、きっと色々覚えられるはずよ。」
「いいの!?」
「ええ。いらっしゃい。」
私の心は喜びで溢れた。
何故だろう、勉強に関してはこんなに大きく心を揺り動かされる。
……失った記憶と何か関係があるのかな。
「突然だけど、新しいお友達を紹介するわね!キュビット、おいで!」
ゲルダさんに呼ばれて、ルンルン気分で部屋に入って、自己紹介。
「私、キュビットっていうの!よろしくね!!」
パチパチ、と部屋が拍手で溢れる。
なんだか照れ臭い。
席はサフィールって子の隣だって。……なんか聞き覚えあるなぁ。
「あ、あの……。君、キュビット……っていうんだね。」
席につくと、隣に座っていた少年……サフィールが話し掛けてきた。
「うん。君はサフィールっていうんだね。よろしくね!」
握手を求めるよう手を差し出したら、サフィールは頬を赤くしたあと「……よろしく……」と小さく呟いて私の手を握った。
初めて、友達が出来た。
なんだか、ウキウキしちゃう。
多分、久しぶりにそう感じた。昔の自分がどうだったかは分からないけど……。
初めての友達
サフィール登場。
次のお話にはジェイドとピオニーも出てきます。