1.ようこそオールドラントへ






「はぁ〜……。今日もパスカル師匠お出掛けかぁ……。」


せっかく、今日こそパスカル師匠に私の発明品見てもらいたかったのに。

白とオレンジが分かれたようなアンマルチア族特有の髪を二つ結びにした少女……キュビットは、
はぁ、とため息をつきパスカル師匠の家の前から踵を返した。


「せっかく、面白い実験出来そうだったのに。もういいや、一人でやっちゃえ。」


自分の家に帰って、兼ねてから用意していたマシンの前に立つ。


「ミニミニタイムマシーン!これがあれば、腐ったパンもまた食べられるようになる!……パスカル師匠喜びそうだったのになぁ。」


理論は作った。できるはず。今日がこのミニミニタイムマシーンを試運転する日だったのだ。……だから実験に近い。


あぁドキドキするなぁ。
受け皿に緑とかのカビが生えた見事に腐ったパンを乗せて……。


「スイッチ、オーン!」


ポチッ!


ボタンを押すと、受け皿に乗った腐ったパンが回り始める。
段々とパンが光を帯びて、いけそうだなぁ、と思ったとき、


その光が、破裂した。



「うわぁぁぁぁあ!?」


私はその光に飲み込まれて。
意識を失った。

















身体に感じるのは冷たい感覚。
耳に聞こえるのは、人の声。













「……はっ!」


がばり、と起き上がった。
見慣れない部屋のベッドに、私は寝かされていた。


「あら、お目覚め?気分はどう?」


聞こえてきた女の人の声に、私は顔をあげる。
白い髪の、綺麗な女の人。


「……うん……気分は……。」


……あれ?
なんだろう、この虚無感。
ぼんやりと頷くと、女の人は自己紹介をした。


「……私はネビリム。ゲルダ・ネビリムよ。あなたの名前は?」


「私の名前は…キュビット……。」


名前を紡いだ所で、私は気付く。
名前しか思い出せないんだ。
眠っていた以前のこと、何も思い出せない。
謎の虚無感は、そのせいだった。


私は額を押さえて混乱した。


「……どうしたの?どこか痛いの?」


ゲルダさん、が心配そうに私を覗き込む。


「ゲルダさん……。私、何も思い出せない。」


ゲルダさんの目が見開かれる。


「眠っていた以前のこと……全部。」


「あなたは、このケテルブルクの広場に倒れていた所を、ジェイドとサフィールに発見されたのよ。」


ケテルブルク……。ジェイドに、サフィール……。
ダメだ、思い出せない。
私は首を振った。


「そう……。本当に何も思い出せないのね。私も、あなたをケテルブルクで見掛けたことは無かったわ。きっと、ケテルブルクの外から来た子なのね。」


「そうなのかな……。」


首を傾げてゲルダさんを見ると、彼女は自らの顎に手を添え何か考えるような仕草をする。


「………じゃあ、しばらく私のところで暮らしましょう。そして、親探しと……万が一見つからなかった時は、どこか引き取ってくれるところを見つけなくてはね。」


「ありがとう……。その、ご厄介になります。」


「あら、いいのよ。一人暮らしに少し寂しさを感じるようになっていたから。」


ぽんぽん、と頭を撫でられて、
……なんだか、頬が熱くなった。


















ようこそオールドラントへ











幼少期から始まるサフィール落ちのお話。
まさかのグレイセスからのトリップ。


冒頭でなんとなく分かる通り、夢主はこれでも結構頭がいいです。
だが記憶を失ってしまった!さてどうなる夢主!




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