13.私にもあった暖かい光






あの後、サフィールは国を出る覚悟をし、私も簡単な荷物と資料をまとめてサフィールについていった。


……なぜってそりゃ……国が生物レプリカの研究及び実験を禁止したから。





「さすがにそこら辺の人とっ捕まえて実験するのは……モラルに反するよね。」


「人で実験しないと、中々研究が進展していかないんですがね。」


「サフィール。そんなに早く捕まりたいの?ある洞窟の周辺で突然人が消える……怪事件だよねぇ……」


「うっ……!」



私とサフィールは、とある小さい洞窟に研究所を構えることにした。
そこまで人目につかない場所だけれど、少し北に向かうとすぐ街道にぶつかる。


だから街道まで行けば人は普通に通るし、行商人なんかも通り掛かるから物資の補給とかには困らない。ある意味素敵な立地だった。


「んー……。じゃあさ、私が魔物とか動物とか狩ってくるから。サフィールは留守番よろしく。」


ジャキン、とゲルダさんの形見の杖に譜業を取り付け少しの改造を施した、銃杖を構えながら言った。
これ、パスカル師匠やフーリエさんが使っていたカッチョイイ武器なんだよね。それを再現したわけ。


「キュビット!?その武器かっこいい……じゃなくて、あなたにそんな事させられませんよ!!」


「何さー、素直に褒めてくれて良かったのに。」


ぶー、と頬を膨らませながら言うと、なおもサフィールは必死に私を止めてくる。


「あなた、もう何年も戦闘経験が無い筈でしょう?怪我したらどうするんですか!」


「大丈夫大丈夫、なんとかやるからさ。じゃ、私の朗報を待て!」


ああっ、待ちなさい!
というサフィールの制止の言葉を無視し、私は道具袋と銃杖を握り締め洞窟から駆け出して行った。



















「ふぃー……こんなもんかなぁ。」


今私の足元には、狩った魔物や動物の死体があった。
とりあえず袋に詰めて帰ろうと、重くなった袋を背負いながら歩いていると、
ずる、と片足が滑り落ちる感覚。



「はひっ?」





それからワケわかってないうちに、私の身体はゴロゴロと斜面を下っていた。



そうそう、ここちょっとした山の中だったのよ。



「あいたたたた……」


転がり落ちた後、頭をさすりながら上を見上げると、さっきまで私が歩いていた場所は遥か上だった。


「……まぁ、大幅ショートカット出来たし。ダイナミック下山?ってことで!」


さあ早く帰ろーっと!
と立ち上がろうとしたら、左足に激痛。


「……っ……う、……あれ、まさか足捻挫した?いやー困ったなぁ……サフィール心配しそうだなぁ……。」


洞窟を出る前に見た、彼の心配そうな顔が頭をよぎる。


このまま日が暮れるまで帰らなかったら探しに来そうだよなぁ。


私はどっちかというと、彼が探しに来る方が心配だった。
小さい頃からの付き合いのせいかどうしても、泣き虫で弱いイメージが強いのだ。


そのためにも、何とかして自力で帰らないと。
そう、捻挫した足を撫でた時である。



「……え……?」


足を撫でている手から、暖かい光が溢れ始めた。


この光には、見覚えがあった。


私や、幼馴染みとで子供の頃色々やんちゃして何回か怪我した事があったけど、その時にゲルダさんがよくこの光を放ち綺麗に治してくれた。


ぼんやりだけど、エフィネアではソフィやシェリアがそんな術を使っていたことを覚えてる。


これは……。


「治癒術、だ……。」


手の中の光が収まると、捻挫の痛みがが嘘のように無くなっていた。
ちゃんと立てる。


……確か、オールドラントでは治癒術は……第七音素の力だったはず。
ということは……私は第七音素を扱う素養を持っていた……ということ?


「第七音譜術士、かぁ……」


嬉しくなって、すぐにでもサフィールに言いたくなったけど、やめることにした。
ちょっと心につっかえた感じがしたから。
治癒術は最終兵器って事で。


と、考えにふけっていると、周りから獣のような唸り声がする。


神経を張り詰め周りを睨むと、数匹の狼みたいな魔物がじわりじわりと草むらや木の影から出てくる。


いつの間にか、私は囲まれていたようだった。


「ありゃりゃ……。囲まれちゃった。」


銃杖を構えると、それを皮切りに魔物達が襲い掛かってきた。




「はいっ!それっ!」


魔物の攻撃を受け流し、全体から距離を取る。


「ブレイバー!」


距離を取った所で、魔物に向かって発砲する。
譜業によって生み出される、第五音素と第六音素の化合で出来たエネルギー弾と閃光で、魔物が怯む。


怯んでいる間に、譜術の詠唱に入った。


「くるくる回転しマス♪メイルシュトローム!!」



魔物達の足元に水の譜術が発動し、現れた渦巻く水流が魔物達を巻き込んでゆく。


水流が収まった頃には、魔物達は全滅していた。


「はい、おしまい!」


我ながら上出来。日頃から譜術の訓練しといてよかったよ。


そう思いながら私は何事もなかったかのように袋を背負い、洞窟に帰った。














「………っ!!!?」


「ただいま、サフィール。」


洞窟で待っていてくれたサフィールは、声になってない声をあげてパクパクと口を動かしていた。
なに?どうしたの?と首を傾げると、彼はけたたましい声をあげた。



「どうしてそんなに泥だらけでボロボロなんですか!!やっぱり戦うことは無茶だったんでしょう!?」


「んや?これちょっと斜面から落っこちてダイナミック下山しただけだから。魔物との戦いでは無傷だよ。」


「……そ、そうですか?……って、斜面から落ちたときは怪我したみたいな言い方じゃないですか。」


あれ、そんな風に聞こえる言い方しちゃったかぁ。
私は即座に首を横に振る。


「ただの掠り傷だよ。大丈夫。」


「……本当に大丈夫ですか?」


じとー、とした目でサフィールに見られ、私は苦笑いしながら頷いた。


「なら、いいですけど……。私、あなたが心配で心配で研究も手につかなかったんですよ?」


やっぱり心配してたんだ……。早く帰れてよかった。


「まあ、この通り無事実験材料持ってきたし。これからは実験材料の調達は私に任せても大丈夫だよ。」


どさ、と魔物や動物の死体が入った袋をサフィールの前に降ろす。
サフィールはその死臭に顔をしかめながらも袋を漁り始めた。


私はそれを横目に見ながら、どろどろボロボロになった白衣を脱ぐ。
改めて見るとこれはひどい。
白衣とは言えないくらい泥だらけで汚れてるし、裾だって破れてボロボロだ。


変えの白衣どこやったかなーと自分の荷物が入っている箱を漁っていると、サフィールが私に声を掛ける。


「キュビット、こんなに実験体を……。ありがとうございます。」


口ではありがとうと礼を言っているが、彼の表情はどこか申し訳なさそうだった。


でも私はそんな彼に明るく笑いかける。


「いいんだよ。私が実験体調達してる間に、サフィールも頑張って研究進めればいいんだからさ。」


「……は、はい。」


目を逸らした彼の横顔がほんの少し赤いような気がしたが、次に彼の顔を見たときはそんな事もなかったから、気のせいだと思った。








私にもあった暖かい光















なんと、譜術だけじゃなく治癒術も使えるようになった夢主。
エフィネアではソフィの光の力がないと治癒術使えないんですけどねー…。ここはオールドラントですから!音素覚醒の時に何かしら作用してたんです。
戦い方はパスカルと似て……ない。全体的に遠距離です。
近づいて術を起こすとかはない。

詠唱はちょっとふざけてます。






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