10.伝わらない






ND2002――。


19歳になった。相変わらずフォミクリーの研究に打ち込んでるよ。



……え?結局異世界飛行理論はどうなったかだって?
研究やめちゃったよ。後で事情を話してジェイド達に私を調べてもらったけど、もう全身にフォンスロット生成されちゃったみたいだし、音素も体内にあるそうだから、完全に諦めた。(って伝えたときのサフィールの嬉しそうな顔ときたら。)



で、そんな日々を送っていたんだけど……。昨日から研究院でサフィールの姿を見ない。
おかしいなぁって思ってジェイドに聞くと、彼にも連絡が来ていないらしい。
心配になってサフィールの家に行くと、その原因がやっと分かった。




「キュビット……。どうしてここに……?」


ドアを開けたのは、ふらふらとしたパジャマ姿のサフィール。
おかしいのはそれだけじゃなく、彼の頬は赤く染まり、目は潤みを帯びていた。
これは……多分熱だ。


そして彼は私に歩み寄ると、私に寄り掛かってきた。
それに驚きながらも支えると、触れた彼の身体はいつもより熱く、やはり熱があるようだった。



「だ、大丈夫!?」


慌てて呼び掛けると、サフィールは乱れた息の中、


「キュビットの姿を見たら、安心、して……。」


そう呟いたきり、黙る。
耳を澄ませば、すうすうと苦し気ながらも一定とした呼吸。


……間違いない。寝てる……。


「……こりゃ風邪だ……。私が看病してあげないとなぁ……。」


この前と逆だなぁと思いながらなんとか彼を引きずり、彼の自宅の中に入る。
そしてよっこいせ、と彼をベッドに寝かせて布団を掛けた。


「まずあれだよね。熱冷ましてあげないと。タオル必要だよね……あるかな?」


ある程度片付いてはいるが、作りかけの譜業とそのパーツだらけの床を気を付けながら歩き、タオルを探して周囲の棚やらを漁る。


するとわりと早く見つかったので、風呂場の洗面器を使って熱冷ましセットにした。


あ、もちろん汗拭き用も持ってるよ!


まずは汗によりベッタリと額に張り付いた髪の毛をどかして、額の玉のように浮かんだ汗を拭き取ってあげる。
次に、洗面器の水で冷やしたタオルを額の上に乗せた。


そうしてあげたら、サフィールの表情が少し和らいだ。



















それから彼の様子を見つつおかゆを作って、今日何度目かのタオルの交換をしていると、彼の眉がピクリと動いてゆっくりぼんやりとした焦点の合わない目が開く。



「あ、おはようサフィール。……大丈夫?」


そういや熱下がったかな?と彼の額に自分の額を当てて熱を測る。
……うーん、まだちょっと熱い。


「よぅし、サフィールも目が覚めた事だし、私がおかゆ作ってあげるよ。食べやすいものが一番ってねー。」


相変わらずぼんやりした顔のサフィールの額に冷やしたタオルをもう一度置いた後で、キッチンへと向かった。










「はいよーお待たせー。おかゆ出来たよサフィール。」


身を起こし、読書をしていた様子の彼はこちらに目を向ける。
おかゆの入ったお皿を渡したら、彼は小さく会釈して「いただきます」と言ったあと、スプーンでおかゆを掬い一口食べた。


「お……美味しいですね……!キュビット、料理出来たんですか!」


パァァと目を輝かせる彼に、私は溜め息をついた。


「あのさぁ……。私を馬鹿にしてない?私、サフィールやジェイドより長く一人暮らししてるんだけど……。」


「あ……そうでした。すみません。決して馬鹿にして言った訳では……。」


しょぼん、と眉を下げるサフィールだったが、「ああ、そうだ!」と声を上げる。


「何?」


「私が寝ている間に、ジェイドはお見舞いに来ましたか?」


「あー残念。来てないのよね。ジェイドも冷たいよねー。」


彼はまた、しょんぼりとおかゆに視線を落とした。


……なーんか、人が心配して来てあげたっていうのに……微妙な気持ちになるなぁ。


「ねぇ、サフィール。看病するの私よりジェイドの方がよかった?」


微妙な気持ちになった末での質問だった。
が、サフィールは首を激しく横に振り、


「い、いえっ!キュビットが来てくれて嬉しいですよ!本当に!」


「……ふーん……本当?」


「はいっ!……あのっ、まるでお嫁さんみたいで……嬉しいんです。」


そこまで言われると逆にこっちの気が引けちゃうなぁ……。


「あっはははは……。おだててもなんも出ないよ?サフィール。そういえば、私が高熱でぶっ倒れた時とまるで逆だね!」


「そ、そうですね……。」









サフィールの顔に影が落ちる。
キュビットは知らない。
さっきキュビットに言った言葉がサフィールの素直な気持ちだったという事を……。












それから無理矢理サフィールの所に泊り込んで看病してたら、不思議な事に彼は次の日にはすっかり元気になっていた。



一緒に研究院に出向いたけど、……まぁそこでもサフィールはジェイドがお見舞いに来なかった事をプリプリ怒ってるのよね。
サフィールらしいよなぁ、と思いながらそれを見ていたけど、
……なぜかまた微妙な……心のどこかで寂しさにも似た何かを感じていた。









伝わらない











キュビットの次はサフィールかよ!っていう。彼の場合はただの風邪ですwww
サフィール達士官学校卒業した後一人暮らし始めてると私的にグッドなのです。
で、サフィールの言葉ですが…まだ十代なんでちょっと恥ずかしいくらいでいいと思うんですよ←
おませさんですぜぇ……。いや、そこまでおませさんでもありませんかね。


はてさて二人の想いは通じ合ってるのかすれ違ってるのか。謎。




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