ディエゴずるい


『ねぇ、ディエゴ』

二人で歩いてるのに、どんどん先に行ってしまう彼の服の裾を掴んでみる。振り向いた彼の表情は無愛想だけど、どこかしら焦りのような物が感じられた。

「なんだよ」
『もっとゆっくり歩いて?』
「…どうしてお前に合わせなきゃ」
『彼女に優しくないディエゴ嫌い』

そう言ってギュッと腕にしがみついてみると、彼の身体がピシリと固くなるのが判った。煩わしそうにため息なんかついて動じないふりをしているつもりらしいけど、胸あたりに押し付けた私の耳には彼の早すぎる心音が聞こえる。全部バレバレ。

「おい#nama1#、歩きづらいだろ」
『そう?ディエゴとくっつけて嬉しいのに…』
「…勝手にしろ。」

このツンツンした態度の裏、クールぶってるけど実際は凄く緊張していて私と目も合わせられないらしい。そんな彼がとても可愛くて、おかしくて、ついつい加虐心が湧いてしまう。

『ディエゴ、すごいドキドキしてる?』
「別に」
『嘘。照れてるくせに。』
「お前相手にそんな訳ないだろ!」

ほら、ムキになっちゃって。顔がほのかに赤くなってる。

『ディエゴ私より可愛いね。』
「俺を怒らせたいのか?」
『ううん。本心を言っただけよ?』
「………お前の方が、…」
『ん?』

小さすぎてなんて言ったのか聞き取れなかった。

『なに?なんか言』
「なんでもない、いいから黙ってろ」

最後まで喋らないうちに少し乱暴に腕を振りほどかれて、代わりにガッシリと手を握られた。彼の意外な行動に私はただ呆気に取られてしまう。
ディエゴが、私の手を、とった。

『…………』
「…なんだよ、嫌か?」
『ううん…なんでもない…』
「ん?顔が赤いぜ#なまえ。どうした?」

顔を覗きこんできたディエゴの口元がニヤリと歪んでいる。少しだけ早くなってしまった自分の心臓が悔しくて、私は地面を見つめる事しか出来なかった。こんなのはズルイ。



20121103 for SUT!

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