ハウリエ


夜のハウオリシティ、しかもビーチエリアは昼と比べると身震いするほど気温が低く、わたしは思わずはあ、と指先に息を吹きかけました。 あー、リーリエだ!と聞き覚えのある声に振り向くと、ハウさんがこちらにぶんぶんと手を振っていました。アローラの木々のように鮮やかな、それでいて落ち着いた緑色の髪が動く度にゆさゆさと揺れるのが、わたしは好きです。
軽やかな足音でわたしの近くまで来た彼はいつものようにニコニコと笑っています。
わたしよりも軽装なのに寒がる様子もないハウさんは、少し赤くなったわたしの指先を見て「リーリエさむいのー?」と気遣って、「じゃあこれあげるねー」と手に持っていたマラサダを差し出してくれました。おそらく先程買ったばかりなのでしょう、食べてすらいません。
恐る恐る受け取る時、彼の指先にわたしの冷えきった指が触れ、びくりと体が反応し頬が少し赤みを帯びたのがわかりました。ハウさんは少しも変わった様子はなく「夜はさむいからー、上着とか買った方がいいかもねー。じゃあおれ行くねー。風邪ひかないようにねー!」と笑顔を浮かべ、嵐のように走り去っていきました。
渡されたマラサダは揚げたてでたしかにとてもあたたかいのだけど、それよりも一瞬、ほんの一瞬だけ触れたハウさんの体温の方がずっとずっとあたたかくて、遠くに消えた緑色がどうしようもなく恋しいきもちになりました。不思議なのです。体は寒いはずなのに、指先と頬が熱く、心臓は走ったあとのように高鳴っています。わたしはどうかしてしまったのでしょうか。冷める前にと1口食べたマラサダは砂糖のせいで甘いはずなのに、どこか甘酸っぱい味がしました。

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