ピーチとティアラ


「ねぇ、ピーチはマリオのことが好きなのに、どうして花を断ったの?」

ティアラがふよふよとピーチの顔を覗き込みながら言うと、突然の問いにぱちぱちと空色の瞳を瞬かせたあと、ピーチは合点がいったように静かにため息をついた。

「だってあの人、私に恋なんてしてないのよ」

ええ、と目を丸くして驚くティアラをよそに、ピーチはどこか遠い目でスチームガーデンの花畑を見つめながら呟く。

「あの人が恋をしているのは冒険なの」

確信じみた声色だった。そう。きっと、彼はピーチがどれだけ思いを馳せてもたった少しのきっかけでどこへでもいってしまう。ひとつの場所に繋ぎとめることなどできないし、たとえ無理矢理繋ぎとめたとしてもそれは彼ではないのだ。
放浪癖にはほとほと参ると彼の弟も長年語る。ジャンプができる足さえあれば、彼は世界中のどこへでもいけるのだ。

「そうよ、花をくれたのもクッパに出し抜かれたくなかっただけ。そうに違いないわ。そういう人だもの、マリオは。」
「……ほんとうにそう?」
「そうよ。さあ、そろそろ行きましょティアラ。次はそうね、ロス島に行きたいわ。」


「……そんなことないのになぁ」
「前途多難だねー」
「うるさいぞキャッピー。直にきみだってティアラにあんな態度とられるんだ」
「やめて!失恋の苛立ちをぼくにぶつけないで!」

prev next

[back]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -