リンゼル(BotW)
「……あなたは、どうしていつも私のそばにいるのですか」
あれだけ邪険にしたのに。いくら同行を拒否しても、着いてこないでと罵っても、彼はいつもゼルダのそばにいる。それがゼルダにはわからなかった。不気味でしょうがなかった。だから思い切って尋ねてみると、リンクはちっとも表情を変えずに淡々と答えた。
「それが、自分の仕事だからです」
それを聞いてゼルダは眉をひそめ、もはや睨むようにリンクを見やると畳み掛けるように口を開いた。
「仕事だから私のそばにいるのですか?なら仕事がなくなったらあなたは私から離れるのでしょうね」
吐き捨てるように言ってから、すぐに後悔した。なぜこんなに嫌味っぽいことを言ってしまったのだろう。俯きながらリンクをちらりと見ると、彼は珍しく表情を顔に出していた。形容しがたい顔だ。傷ついたような、否定されたような、迷子の子どものような、そんな顔。
「……それは、違います」
「何が違うのですか?」
問い詰めると、リンクは視線をあちこちにやって唸り、やがてふるふると首を振った。
「……そろそろもう冷えます。宿屋に戻りましょう」
「待ってください!リンク!」
呼び止めてもその背中は止まらない。こうなってしまってはもう問いかけても答えてはくれないだろう。ゼルダは小さくため息をついて、退魔の剣を背負った背中を追いかけた。
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「……なんてことがあったのを、おぼえていますか?」
ゼルダはすこし困ったような顔をしながら、思い出話に花を咲かせた。リンクはこくりと頷いた後、そうだ、そうだったと急速に蘇る記憶を静かに咀嚼していた。あのとき本当に言いたかったのは。
「あの時、あなたは本当はなんて言おうとしたのですか?」
テーブルの上の紅茶を一口飲みながら、ゼルダが目を伏せたのを見て、リンクは静かに口を開いた。前は言葉に出来ず言えなかったが、今なら。
「俺が、あなたと一緒にいたかったのです。仕事などは関係なく、ただ一人あなたと。」
20170809
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