ルフルフ(パラレル)
ルフレ♂がギムレー化した絶望の未来からきたルフレ♀
のパラレルです なんでもいい人向け 多分幼なじみとか双子とかそういうの
その琥珀色の瞳が僕を映した途端に歪んだ。目深にフードを被っていたせいで表情までは読み取れなかったけれど、両手で顔を覆い崩れ落ちた所から泣いている事は嫌でもわかった。
同じ服を着た華奢な肩が震えている。もしかしたら、なくした記憶の中の知り合いなのかもしれない。思い出そうと脳を探るも、まるで最初から存在しなかったかのようにそこにはぽっかりと穴があいていた。
「…ねぇ」
手を伸ばすのはなぜか抵抗があった。そっと声を掛けると、ぐちゃぐちゃに濡れた瞳が僕を見る。ちくりと胸が痛んだ。少しは洒落たものも持てとヴィオールに渡されたまだ新品のハンカチを差し出す。
「これ、使って?」
震えた両手で受け取った。涙で濡れた黒い手袋に包まれた手はほっそりとしている。目尻に押し付け、落ち着くのをぼんやりと待った。あの目をどこかで見たような、でもやっぱり霞がかかったように思い出せない。
「…ごめんなさい、取り乱して」
すう、と深呼吸して、彼女は言った。別にいいよと返すと、彼女は僕の目をまっすぐに見据えてそれから、辛そうな顔をした。僕には彼女がそんな顔をする理由がどうしても思い出せない。
「ルフレ…本当にルフレなんですね…」
確信した。彼女は記憶を失う前の自分を知っている。でもダメだ。どうしてもわからない。こんな子を泣かせるだなんて過去の僕はなにをした?
「ごめんね」
「なぜ謝るんですか?ルフレは悪くありませんよ」
「そうじゃない。君は僕を知っているけど、僕は君を知らない…思い出せないんだ」
赤く充血した目が大きく見開かれた。薄い唇がわなわなと震えている。ひゅう、と呼吸が乱れて喜色に染まったと思った瞳が絶望に染まり直すのが見えた。
「記憶がないんだ。気がついたらイーリスで倒れていてクロム……聖王に拾われ今に至る。なんでもいい。昔の僕のこと、知っているなら、教えてくれないか?」
ぎゅうと唇を噛み俯く。また辛そうな顔をした。君との思い出をすべてなくしてしまったんだ。なによりもそれが辛いよ。
ああ、と目眩を抑え悶えるように額に手を当て、彼女は悲痛な声を出した。
「そんな……そんなことって……でも……」
俯いたまま、意を決したように彼女は言った。
「思い出さない方が、いいと思います」
「どうして?」
「その記憶はあなたにとって辛いものです。思い出したらあなたはきっとまた苦しむから……」
優しい声だった。感情を押し殺し、そう務めているような声色であった。俯いているため表情は見えない。でもその大きな双眼からぱたりと止んだはずの雫が落ちたのを見てしまった。(また苦しむ、って何だ?)
「また泣かせちゃったね」
無意識にこぼれおちた言葉に彼女は目を釣り上げて僕の胸倉を掴んだ。その拍子にばさりとフードが脱げる。同じ髪の色だった。
「……っ!またってなんですか!やめてください!そんなこと言うの!」
期待、してしまうじゃないですか……
そう言って縋り付く彼女の泣く姿をこれ以上見たくないと、率直にそう思った。
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