あなたはどこでも変わらない


ペーパーmixネタ ペラペラでもふっくらでも



毎年城で行っているクリスマスパーティも一段落して、私とマリオはだんだん人が減っていくホールから抜け出し、バルコニーへ向かった。私の手を引く彼の手は手袋ごしでも暖かい。ちらりと横顔を盗み見ると、いつも優しげに私を見る双眸は若干の疲れを滲ませながらもなんだかとても安らかに見えた。

パッとマリオが手を離して窓を開け、促した。消えた温もりを残念に思う。マリオはこういう気遣いがとてもうまい。自分だって疲れてるだろうに、疲れてないかだとか寒くはないかだとか、気を使って。私が思ったことをうまく汲み取って先に行動するものだから、困ってしまう。ありがとうとお礼を言うと、マリオはほんのりと赤く染まった頬を緩ませた。

バルコニーに出ると、視界に白いものがチラつき、冷気が肌を刺す。まあ、と思わず声を出すと、マリオも嬉しそうにサンタ帽をずらして空を見た。
水が混じった雪であった。下を見ると、ちっとも積もってはいない。まだ降り始めて間もないのであろう。あの時とは質が違うけど、降る雪の量は同じだった。彼をちらりと見てからおもむろに口を開く。

「前に、もう一人の私と雪山に囚われた時があったでしょう?あの時もこんなふうに雪が降っていたのだけど、そこで色んな話をしたの」

マリオは空から視線を私に向けて、続きを促すように目を細めた。こういう時、彼は口を開かない。じっと、私の話を聞いている。

「あなたは知らないと思うけれど、その話のほとんどにね、あなたが出ていたのよ」

マリオはきょとんと目を丸くして、ぱちぱちと瞬いた。その様子にふふ、と笑いながら私は続けた。

「びっくりしちゃったわ。カノジョが言ったもう一人のあなた、あなたと全く同じなんだもの!」

そうかな、とでもいいたげに苦く笑った。そうね、あなたの方があの人と居た時間は圧倒的に長いけれど。でもカノジョと話していてすぐに確信した。世界が違えどあなたは変わらない。明るくてちょっぴりお茶目でいつも元気いっぱいな、お人好しなスーパースター。

少し長居しすぎたか、ぶるり、と体が震えた。マリオは慌ててさっき閉めた窓の方に足を向ける。私はそれを手で制止した。

「待って、まだ平気よ。それよりもっと話しましょう?」

にこり、と笑ってみせるとマリオは心配げに顔を曇らせながらも仕方ないと私の体にそっと寄り添った。その行動にまた、笑った。なにもかもあの時と同じだ。違うのは彼の方がずっと暖かいことだけ。私はこちらをやさしげに見てくるあたたかな横顔を見やった後目を閉じて、再び語り始めた。
クリスマスは今年も穏やかに過ぎていく。

20151226

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