マリオとリンク
金属音が擦れる高い音が部屋に響く。
やることも無く、手持ち無沙汰だったので、マリオは武器の手入れをしているリンクの隣に座り込んだ。
ちらりとリンクはマリオを一瞥したが、気にせず手元の剣に視線を戻す。
床に散らばる道具はすべて彼のものである。弓や爆弾、クローショットなど乱闘で使われる道具はもちろん、カンテラや釣竿など日常生活で使うものもある。
だが、中にはマリオにはわからない道具もあった。コマのようなものや、杖みたいなものも。
そんな道具達を、マリオは興味深そうに見つめていた。
ちらりと道具からリンクの方に目を向ける。研石で傷つけないように、丁寧に、剣を磨いている。確かあの剣はマスターソードと言ったか。彼とは別人だが、前にここにいた時の勇者も同じものを持っていた。共通点はあるが、やはり持ち物は所々違う。
マスターソードは、剣が主と認めた者にしか持てないらしい。昔持たせてもらったことがあったが、重すぎて立ってられなかった。軽々と持っているリンクが不思議に思えるくらい。
「そんなに見つめられたらなんかやりにくいんだが…」
終始無言で見つめていたからだろう、リンクはぷいと顔を背けた。
ああごめんと慌てて頭を振って、マリオは弁解をした。
「いろんな道具持ってるなぁって」
「いろんな道具を使いこなさなきゃ神殿の奥に進めないからな」
剣の手入れを終えて鞘に収め、リンクはチェーンハンマーに手を伸ばす。自然とマリオの視線もそれを追うような形になった。
「それは?」
「鎖の部分を持ってぐるぐる回して、いろんなものを壊すハンマー」
へぇ、と感嘆の声を出すマリオ。リンクはそれに苦笑いしながらも少しうれしそうだった。
ボクもハンマー持ってるんだよ、なんていたずらっぽくマリオはウィンクをした。
「まあそれとは違う、普通のハンマーだけどね」
「一度取ったら振り回したくなって、脅威の吹っ飛ばし力を誇るあのハンマーか?」
真顔でそんなことを言うものだから、マリオはつい吹き出してしまった。
そうだけど、違うよと笑い混じりに否定するが、リンクは至って真面目らしくなにが違うのかわからない様子だった。
「普通のハンマーは殴ってもあんなに吹っ飛ばないよ」
そうなのか?と首を傾げる。きっと彼は田舎の村に住んでいたからあの乱闘用に作られたハンマーとチェーンハンマーしか知らないのだ、仕方ないだろう。
「こうして話してると、別々の世界から来たんだって実感するね」
ふいに瞼を伏せたマリオに対し、リンクは呆れたように「ははっ」と笑った。
「なにを今更」
20140305
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