ネスとマリオ


「そして恐る恐る振り向くとそこにはなんと…」
「なんと?」
「こーんなに大きなテレサが…!」
「きゃあああああ!」
「ちょっと、やめて、夜中にトイレいけなくなる」
「それでそれで?その後どうなったんですか?!」

ちいさなテーブルを囲んで、思い出話に花を咲かせる。みんながきらきらと目を輝かせて、身を乗り出して聞くのはマリオの二回目の宇宙での冒険。ぼくはすでに聞いた話だけど、マリオの話は何度聞いても面白いから、何も言わずに耳を澄ましている。
身振り手振り、すこしオーバーすぎじゃないかとばかりに話すマリオのそばには、いつも爛々と瞳をきらめかせながら耳を傾けるひとでいっぱいだ。(それもそのはず、かれの話は本人の対話力も相まって時間をわすれるほど面白いのだから!)

マリオは冒険が大が二つくらいつくほど好きである。かれがじっとしたら逆に心配するくらいに。冒険がなければ、今のマリオはきっといない。終わったと思っても、気がついたらまた新しい冒険に飛び出していくのだ。空の上だったり、ジャングルだったり、はたまた未開の地だったり。それを見て困ったひとねとピーチは肩をすくめる。

話している本人だって、楽しそうにくるくると表情を変える。その時がいちばん活き活きとしていると言っていいほど。数え切れないほどの旅をしてきたのに、その全てがスカイブルーの瞳の奥に大切にしまわれている。星の数ほどあるイメージ世界のなかでもマリオの旅路は群を抜いてそこらじゅうできらきら光り輝いているよ、とマスターも言っていたのを思い出す。

ぼくもまた大きな冒険をした。いや、このスマッシュブラザーズに呼ばれたひとは全員と言っていいほど大きな冒険をして、世界を救って、それを各自大切に抱えている。マリオほどたくさんは冒険していないし、一度だけだけど、ぼくの脳裏には未だにあの時見た世界がちらつく。きっとそれは一生わすれない思い出になるだろう。詰め込んだリュックから零れ落ちるくらいのたくさんの思い出。

ちいさく口に出した。あのとき必死に繋げ合わせた八つの音のかけらはまだ新しい色を帯びている。
最後まで音にして、集まる視線にハッと顔を赤らめ頭を掻いた。マリオがぽんと楽しそうに目を細めて言った。

「じゃあ、次はネスの話を聞こうか」

20150309

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