fategoの二次創作3
2016/10/19 22:48

明日も同じような日が来るなんて保証はない。分かってるのに、分かっているのに、望んでしまうの、どうしても。
 今日もいつもと同じように、先生がわたしの近くで魔術の授業をしてくれる。同じじゃないのは、その早さ。第七特異点がいつ見つかるかわからないから、出来るだけ早く終わらせられるように計画を立て直して、進度を早くしてくれたみたいだった。有り難くて、悲しくて、寂しい。
「先生、今日も授業ありがとうございました。お茶を入れようと思うのですが、いかがですか」
「ああ、では頼む」
「はい! ですがその……ティーパックの簡単なものなんですけど、大丈夫ですか?」
「ああ」
 先生はそう答えて、持参してきていた魔術書に目を落とした。きっとわたしが読んだってわかんないのだろうけど、先生との授業がもっと続けば、そうこの時間、この瞬間が、いつまでも続いていけば、わたしにだってわかるようになるかもしれない――なんて。そんなこと、思っちゃいけないのに。
 用意した2つのコップにパックを入れて、お湯を注いで、蓋をして少し蒸らす。手作業がないと、こんなことばかりを考えてしまう。だって終わりが見えているから。終わりが見えない中で頑張るより、ぜんぜんマシなはずだってそう思う、のに。
「先生」
「……ん、何だ」
「わたしたち、もうすぐ終わりますね」
わたしは振り向いて、先生にそう言った。先生は本を見たまま答える。
「喜ぶべきことだろう。私達の望む人類史はこれからも続いていくのだから」
「でもわたしたちがやってきたこと、全部なかったことになるんですよ、わたしたちの冒険、たくさんのサーヴァントたちに助けてもらえたこと、先生に……こうやって授業をやってもらったことも、全部、ぜんぶ」
「君は」先生は本から視線をわたしの方へ向けた。
「本当はこの時間が続いて欲しいと思っているのか」
「それは、パパとママ、どっちが好き? ――ってことですか?」
 わたしには皆と過ごす時間も、人類史のことだって大切なのだ。どちらかひとつ、選ぶことなんてできない、けど、いつかは選ばなきゃいけなくなってしまうのだろうか。
「君が何を言っているかはわからないが、まあ、言いたいことは良く分かった」
先生はそう言って、また本に目を戻した。そこで何も言わないのが、きっと先生なりの優しさなのだった。

どうかわたしに、あなたとの時間を続けさせて欲しいと、その一言がどうしたって言えない。














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