fategoの二次創作
2016/09/23 11:27

憂鬱な訳じゃなかった。
でもなんとなく視線が下に向いてしまって、私の足はふらつく。まっすぐ歩きたくても、歩けないのだ。なにもする気が起きなかった。なにか食べたいとすら思えなかった。ただこうしてぼんやりして、ふらついている。そしてわたしは、歩きながらさっきの夢の内容を思い出している。



夢というよりは、記憶、回想、そのようなものなのだけど。
天草の夢を見た。戦場には彼ひとりだけが立っている。仲間は、みんなもう死んでしまったのかもしれない。それでもその瞳は、強い意思に灯っている。憎しみも怒りも悲しみも全て――仲間のために、ひとりでも多くの仇を打ちたかったのかもしれなかった。彼はまたひとり、人を斬る。そして、彼の首にさげられているロザリオは血を吸って変色してしまう。そのときに、彼の心もまた、別の物に変わったのかもしれなかった。
だからわたしは、わたしたちは、神さまを信じられなくなってしまったのかもしれない。





「マスター、お疲れですか」
「……天草。どうしてそう思うの?」
「ふらついていましたから……いまにも転けそうでしたよ」
「わたし、こういう時、真っ直ぐ歩けなくなるのかもしれない」
天草は少し首を傾げた。でも何も言わなかった。彼の瞳は、あの時と同じような憎しみが垣間見えている。人が嫌いなんだ。それでもその本当に裏切り続けて人類を救おうと、そのために傷つき続ける彼を想う。
「天草、わたしの手をとって」
「はい、……どこに行かれるのですか?」
「天草はどこに行くの?」
「私はマスターの行かれる所におります」
微妙に答えになっていない。はぐらかされている。
「わたしは天草が行きたいところに行きたいの」
本当に、わたしたちは通じ合わない。



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