「つまりまとめると、なんだかよくわからないけどきがついたら此処にいた。」

「つまるところそういうことだな」

まさかの自称戦国武将発言に驚きと哀れみを隠せない綾芽による一問一答方式で聞き出した話を纏めるとそういうことになった。
哀れみとはちょっと頭おかしいのかな、とか思ってた。

つまるところ、なんだかよくわからないけどきがついたら此処にいた。
これ以上こんな武将が出てきては心の臟に悪いと、広くもない家を姉の木刀をもって(敵うとは思っていないが精神安定剤)練り歩いたのは記憶に新しい。
もちろん後ろに比較的友好的に接してくれる赤と青の武将をつれてだが。

この九町綾芽という女子、姉は天下の天津神の軍人だが綾芽自身はただの学生。
すぐに姉を呼ばねば、という危機感をすっかり忘れていた。

綾芽は昔から忘れ物の多い子供であった。

ちなみにそれ以上自称戦国武将は増えることはなく、つまるところ、4人の野郎がこの家に生えてきたと、そういうことらしい。

その4人をリビングにあつめ、ぎこちなくも自己紹介をし、一問一答形式で情報をあつめ、赤と青の部下とかいう怖いお兄さん達に睨まれながら話を纏めた結果がそれだった。
脱力感が綾芽を襲う。

何も得ているものがない。

かなり長い時間を自称戦国武将達に費やした結果、くぅんという腹の虫の主張により夕食がまだだった事を思い出した。

「ごはん、たべますか?」

自称戦国武将達も少なからずこの状況に絶望感を覚えているらしく、見たところしょびんとしているではないか。
先程とは違う哀れみを感じて兎にも角にも自分がしてあげられることはお腹を満たすこと位ではないかと、思い立った。

「なんと、」

ごはんという言葉に反応したのは赤の武将、真田幸村と名乗った青年だ。

「馳走なってよいのでござるか、
いやしかし。綾芽殿のような幼子に、、」

「だれが幼子だ。私は今年中等学校にあがるですよ、
もう幼子ではないのです。」

幼子といわれたことにすこし憤りを感じながら、えへんとぺたんこな胸を張ってみた。
そうなのだ、自分はもうすぐ中等学生。
たいていのことはできる(と思っている)





夕食は武将の意見よりも早さと安さと量で決めた。
そして炒飯を皿に盛って、なんとなく手負いの野良猫に餌をやる感覚で武将の前に置いてみる。

怖いお兄さん達が料理の最中ずっと監視していたので危ないものを入れていないことはわかっているはずであるが、武将たるもの、そんなに簡単に食事するとも思っていない。
仕方ない、食べなかったら明日の朝ご飯とお弁当にして晩御飯も炒飯にするしかないな。
なんて考えている間に、幸村の皿は空になっていた。

少しは武将らしく警戒とかなんとかしようね、なんて武将に会ったこともないのに思いながら自分の分の炒飯を食べる。

「珍妙な味ですな、」

後にわかることになるが、この片倉小十郎影綱という男、独眼竜の右目という役目以外に遺伝子改良無し無添加無農薬の野菜作りに長けた男でもあった。
スーパーの安売りで適当に選んだ野菜(しかも萎びてる)で適当に作ったチャーハンに些か不満のようである。

「不味いなら、残してもいいですよ?
綾芽が食べてあげます」

「童、お主見かけによらずよく食いやがるな。
だが出されたもんは食う。」

「残念ながらこの九町綾芽、青春謳歌しながら成長期真っ只中ですので」

「人の残したものを食すなど浅ましい童だ。」

「浅ましい?残念ながら綾芽は貴殿方のように高貴なご身分ではないのです。
それにそんなに残っていたら勿体ないのです。」

そして結局綾芽は小十郎が、自分が食べると言っているにも関わらずがばりと小十郎の皿を傾けその腹のなかにチャーハンを納めていった。
政宗と幸村は浅ましいという小十郎の意見にうむ、確かにそうだと一国の主としての自覚が戻り、それ俺にも頂戴とは言い出せなかった。

人の残したものを食すなど浅ましい。

あたまの中で繰り返しながら少女が炒飯を掻き込むのをただ見ていることしかできなかった。





「まず此処の話をします」

彩芽は地図を4人の前にぺたりと敷いた。
地図には天津神と國津神が大きく載っている全国版だ。
天津神と國津神は所謂元々レジスタンスのような組織から成り上がった一国である。
元々一つの国であった二国を記すこの地図は所謂日本地図というやつだ。

「これは日ノ本ではござりませぬか!」

「日ノ本と言うのですね。
私たちの歴史では高天原と呼んでいます。
かつて高天原は一つの国でした。その島国はある時二つのレジスタンス勢力により二分されます。
天津神と國津神です。
その二つの勢力は強大に成長し、国と成りました。今は世界の殆どがその二つの国によって統治されており、また互いのお国は冷戦状態で今なお国境を接している訳です。」

冷戦とはいうものの、ぶっちゃけ和平案でてて今世界は平和なんですよね。

という一言を付け足して説明を締めくくった。

「平和、、なのか」

「はい。戦争も国が二つしかなくなったので無いですね。
所々で反乱は起きてますけどすぐ鎮圧してます」

top content